ポイント
-
1図面データに付帯情報を紐づけ、類似の事例をAI検索
-
2過去の事例を参考に見積書作成を効率化し、顧客対応をスピードアップ
-
3AIの精度向上を図り、将来的には人材育成や営業力の強化にも活用
図面データに付帯情報を加え、蓄積された情報を有効に活用
フレーム溶接構造をはじめとした大型の金属加工を強みとしている同社では、見積書作成時の材料費の算出や工数の設定にかかる負担が大きいという課題がありました。図面はPDFやDXFデータで管理していたものの、いつ、どんな依頼をどのように対応したかは担当者の記憶頼り。探すのに時間がかかる、共有すべき注意事項が十分に伝わっていない、似たような前例を見逃して一から作業をしているなど、蓄積されたノウハウがうまく活用されていない状態でした。そこで着目したのが、AIによる図面の画像検索です。吉田氏は「作業に必要な情報を図面データとセットで抽出して担当ごとの属人化を解消し、見積書作成にかかる課題解決を図りたかった」と導入のきっかけを振り返ります。
数万枚の図面データベースからAIが類似の事例を探し出す
2023年4月、同社は小規模事業者持続化補助金(一般型)の採択を受け、数社の候補の中から自社の業務に必要な機能を集約したクラウドシステムを提案した会社を選定。蓄積された数万枚の図面に納期や価格、リードタイムなどの情報を付帯したデータベースを構築し、類似性の高い図面をAIで検索するシステムを導入しました。
操作は取引先から提供された図面データを検索ボックスにドラッグ&ドロップするだけと非常にシンプルで、取引先名などの条件から検索する機能とも併用できます。同社では受注分だけでも月間300枚近くの図面に対する見積書を作成しており、このシステムの本格稼働によって事務作業の大幅な効率化を進め、顧客対応のスピードアップを目指しています。
本稼働に向けて精度アップに取り組む
現在は試験的に運用していますが「AIの精度も業務の効率化も想定したレベルにはまだ届いておらず、AIを育てている段階」と語る吉田氏。AIの検索結果を評価しながら学習させ、システム会社と協力して精度の向上に取り組んでいる真っ最中です。
見積書作成の中でも特に吉田氏が担っている工数設定は、使う機械や作業の順番、使用時間などを考えて最終金額を算出する重要な業務で、マスターするには経験が必要です。吉田氏は「AIで類似した例を簡単に検索できるようになれば、業務の引継ぎを視野に入れた教育も進めやすくなるはず」と語り、人材育成にも活用したいと意欲を見せます。
今後の展望
AI画像検索システムは社内で同時に2名まで利用でき、タブレットからのアクセスも可能です。今後は蓄積したデータを会社の財産として社内で共有し、客先での商談に活用するなど、営業力や提案力の強化にも活用していきたいと考えています。また、過去の事例から学んだり、今の技術のいいところをプラスしたりするヒントも見つけやすくなり、さらに高品質なものづくりを追求していけるのではと期待しています。3年後を目途に挑戦している「自社設計のオリジナル商品を開発する」という夢の実現に拍車をかけていきたいですね。(取材者:代表取締役 吉田 誠 氏)
取り組みにかかったコスト
コスト | 約130万円 |
---|
相談先
相談先 | 小規模事業者持続化補助金(一般型)を活用 |
---|
会社概要
事業所名 | 株式会社吉田機工 |
---|---|
代表者 | 吉田誠 |
所在地 | 福井市大森町108-3-10 |
従業員数 | 27名(2023年11月現在) |
取扱品目 | マシニング加工、旋盤加工、製缶溶接加工 |