付加価値の小さい作業に時間が取られている
1948年創業の繊維倉庫業者で、北陸の繊維産業の発展と共に歩んできました。合繊糸から各種の織物、ニット製品の保管、配送業務をはじめ、近年は輸出入通関業務、保税倉庫、海上貨物、航空貨物にも取扱いを広げ、国際物流業として事業を拡大しています。
北陸のテキスタイル産地に相応しいハンガーサンプルなど各種のPRや販促用製品の作成も手掛けていますが、こうした事業は手間がかかる割には採算性が低いこともあり、競合社は繊維産業から他の産業へ比重を移しています。
繊維業界における当社への期待が大きくなっていることもあり、保管している繊維製品の数が膨大になり、管理に伴う時間が増えてきています。結果、事務負担が大きいだけでなくミスが発生しやすく、優秀な事務社員が定着しない状況が続いていました。
DXで人間は付加価値の大きい仕事へシフト
人材不足が続く中、優秀な事務社員の定着を図り付加価値の大きい仕事に多くの時間を割けるようにするため、デジタル技術を使って付加価値の小さい作業を効率化することを目的とした業務改善を行うことにしました。
具体的には、RFIDを使って加工反の在庫管理を行うシステムを構築しました。
・倉庫入庫:RFIDプリンターで管理Noを印字したRFIDタグを加工反に貼りつける
・倉庫出庫:出庫予定のデータをもとにRFIDタグを読み込んで出荷検品を行う
・在庫探索:RFIDリーダーを在庫品に照射することで探している加工反を発見できる
このシステムにより、これまで2人で行っていた出庫検品を1人でできるようになり作業工数が削減されるだけでなく、間違いが減ることでお客様からの信頼が高まることが期待されます。
現場の知恵をシステムに反映して使いやすいシステムに
開発にあたっては、実務を行っている社員に試行してもらいながら、使いやすいユーザーインターフェースを実現しました。
・検品で出庫ミスを検出した場合に音で知らせる
・検出した出庫ミスがどういう内容かを簡単に発見できるようにする
・在庫探索のときに探している商品が遠いか近いかをイメージで分かるようにする
また、RFIDの電波が届く範囲が適切でないと誤読込が発生するため、検品のときは2mくらいの範囲、在庫探索のときは10mくらいの範囲、というように機能ごとに制御することで使いやすいシステムにしています。
このように、目的を達成するために、現場の知恵を徹底的に取り込んだシステムになりました。
ITコーディネータから一言
自社の変革(トランスフォーメーション)だけでなく、業界の変革も視野に入れた取組みが特徴の事例です。
DXはデジタルツールを導入することが目的ではなく、組織を変革させることを目的にデジタルツールを手段として活用することです。
同社の事例は、企画段階での経営者の目的意識、現場の知恵を活かした開発等、目的達成を常に意識した内容です。
デジタルツールを導入したが成果が出ていないという相談をよく受けます。それは、デジタルツールを導入することが目的化してしまうからです。同社の取組みを参考にしてください。
お話をお伺いした方
かかった経費(予算)
コスト | 約770万円(システム開発費などを除く) |
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会社概要
事業所名 | 株式会社 福栄倉庫 |
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所在地 | 福井県福井市中央3-3-19 |
代表者 | 青木伸光 |
従業員数 | 41名 |
業種 | 倉庫業 |
事業内容 |
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