社内DXの全体像を描き、計画的にDXを推進

同組合は、組織内に情報システム担当者を配置するなど、これまでもIT化に熱心に取り組んでいました。
2021年春に、ふくいDXオープンラボでの相談をきっかけに、「DX専門家派遣事業」でITコーディネータからアドバイスを受けたことで、同組合が取り組むDXの全体像が整理されました。
その後、DXを具体的に進めるために社内プロジェクトを立ち上げて、社内の合意形成を図りながら計画的にDXを推進しています。

社内プロジェクトによる合意形成

ふくいDXオープンラボの「DX専門家派遣事業」の報告書の内容を実現するために社内にDXプロジェクトを立ち上げ、プロジェクトメンバー15名による検討会議を2021年12月~2022年6月に計13回行い、全社的なDX推進に向けて各サブシステムについての検討を実施しました。

これにより、社内の様々な課題に対してデジタル技術で解決する方法についての合意形成が図られ、以下のようなシステムの導入が検討されました。
・オンライン現場システム
・遠隔監視システム
・試薬管理システム
・作業実績収集システム
・ワークフローシステム
・電子帳簿保存法への対応 等

その中から、まずは「オンライン現場システム」に取り組むことになりました。

目的と目標を明確にしてシステム構築に臨む

「オンライン現場システム」を使用する浄化槽や集落排水の維持管理事業では、下水道の普及や人口減少により、対象世帯数の減少傾向が続いています。また、維持管理する浄化槽や集落排水の設置場所は市街地から離れた地域が多く、移動に時間がかかるなど生産性が悪い状況になっています。

そのため、事務作業のために事務所に戻る時間を減らすなど業務の効率化を図ることや、外出している社員との電話等のコミュニケーションを効率的に行うことで緊急時の顧客対応などをよりスピーディーに行えるようにすることが課題となっていました。

そこで、システム構築により顧客満足の向上を図ることを目的とし、緊急時の対応時間を3時間短縮して緊急対応時の平均訪問数を3件増加することを目標としました。

作業効率とセキュリティの両立で顧客満足の向上

作業効率(使い勝手の良さ)と情報セキュリティ対策という二律背反の事項を両立できるよう、以下のような機能が実現できるシステムとし、開発時には現場作業を担う社員に試用してもらい、その評価をシステム開発にフィードバックするようにして、システムの構築を行いました。

①事務所に戻らなくてもオンラインで過去のデータ等にアクセスできる
②地図情報を利用して点検場所へのルートがわかる
③電波の届かない訪問先での作業もあるため、オフライン状況でも実績の入力ができ、電波状況が改善してから実績を送信できる
④端末を紛失した際の情報漏洩対策としてBitLocker機能を利用する
⑤BCP対策に対応するため、クラウド環境にバックアップシステムを構築する

ITコーディネータから一言

DXを進める場合に、全体像を描かずに場当たり的に行う企業を多く見かけます。
このような方法だと、デジタルツールを導入した当初はそれなりの成果を出しますが、その後に別の課題解決のためのデジタル化を図る際に、以前に行ったデジタル化が無駄になる可能性があります。そうしたケースをこれまでいくつも見てきました。
DXによる組織変革は一朝一夕で出来るものではありません。継続した一つ一つの積重ねの先に変革ができあがります。
DXの全体像を明確にして計画的に順次推進することが、DXを成功に導く近道である事例です。

お話をお伺いした方

専務理事 林 正浩 氏

かかった経費(予算)

コスト 非公開

会社概要

事業所名

福井県環境保全協業組合

所在地

福井県福井市角折町第8号3番地

代表者

代表理事(理事長) 二木 和則

従業員数

120名

業種

サービス業(他に分類されないもの)

事業内容

浄化槽の維持管理
環境計量証明
作業環境測定

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