ポイント
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13Dスキャナーで施工現場そのものを3D空間として実寸大で取得
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2施工後の現場イメージをVRで共有し、計画の後戻りを削減
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3実際の現場に仮想物体を投影するMRで、施工結果をリアルにシミュレーション
3Dスキャナーで現場などの実空間を3D空間化
同社では、30年以上前のバブル期に建設された各工場の設備や機械の入れ替え工事の案件が増加する中、図面を作製するために行う寸法の手計測や手描きによるスケッチなどに時間を要していました。そうしたアナログ作業からの脱却のために、3Dスキャナーを導入。
レーザー光を360度照射し、対象物の幅や高さなどの計測結果を3次元(XYZ)の座標値にデータ化し、対象物の3D点群データを作成することができるようになりました。これらの計測データを図面の作製に活用しています。さらに点群データと3Dモデルを合わせて活用するため、VRヘッドセットを導入し、VRの没入感を生かしながら顧客への施工の説明や提案を開始しました。
施工の完成イメージをVRでわかりやすく表現し、顧客と事前に調整
これまでは、顧客が持っていた完成イメージと実際の仕上がりにギャップがあった、と施工完了後に指摘されたケースもありました。「例えば、『これはもう少し高い位置がよかった』などと言われることがあり、そういう認識のずれや、計画の後戻りを極力減らしたかった」と話す西尾社長。
そのために、遠隔からでも没入感の中で現場のイメージを掴めるVRを施工内容の説明や提案に活用するようになりました。顧客からは、「施工後の現場をイメージしやすい」と好評です。
このようにVRは没入感の中で体験できるため、実際に現場で起こる危険を想定しながら安全教育などを行う教材としても活用が期待されています。VR上で危険や事故を体感することで、安全を確保しつつ臨場感のある作業が体験でき、実際に現場に出たときに危険を察知しながら動けるという効果が期待されます。同社ではVRで体験しながら技術を習得できる教育教材などへの活用も検討しています。
MRで、実際の現場でシミュレーションし最終確認
見るもの全てが仮想であるVRに対し、MRは現実の空間に仮想の物体などを重ね合わせて投影できる技術です。
「例えば、机やホワイトボードなどの仮想物体を配置したい場所に投影し、その様子をMRゴーグルで見て、既存の設備と干渉しないかどうかなどを確認できます。工場だったら、作ろうとしている通路幅で台車が通れるかどうかなどを施工前に実際の空間で試してみることが可能です」と話す西尾社長。
顧客は、VRで施工後のイメージを事前につかみ、現地で行うMRによる最終シミュレーションで、大きさや高さ、位置などをリアルに確認してから、施工するかどうかを決定します。このような手順を取ることで顧客の完成イメージの理解を深め、計画の後戻りや完成後の違和感を回避することを目指しています。
今後の展望
建設業界で扱われるVRは、計測手法をデジタルスキャンに変え、データを使って作図や調査を行うものでした。それが現在では、設備の修繕履歴などの他データとひも付けて保全にも活用されるようになってきており、既にプラントエンジニアリング向けのソフトが出てきています。当社が扱うのはプラントほど大規模ではない空調設備がメインということを踏まえ、現場の全体の情報は比較的データが軽い360度カメラ、詳細はデータ量の多い点群データ、さらにそれらに修繕履歴などの情報をひも付けるなど、それぞれの得意分野を組み合わせながら、保全まで含めた新たな展開を考えています。
取組みにかかったコスト
コスト | 数百万円(補助金活用) |
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相談先・業務委託先
相談先 | 3Dの技術に関心を持つ同業者および機材メーカー |
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会社概要
社名 | 株式会社 ニシオ設備工業 |
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代表者 | 代表取締役 西尾 康治 |
所在地 | 福井市上河北町18-43 |
従業員数 | 2名 |
業種 | 空調・衛生設備の設計・施工・現場管理サービス |
取扱品目 | 空調設備、衛生設備 |
創業 | 1972年 |