DX推進部の創設とDX推進計画の作成
今後のデジタル時代を見据えた経営トップの英断により、2021年2月の組織改革で「DX推進部」が創設された。「デジタルを活用して、業務の効率化だけでなく顧客価値の向上を目指す」という目的のため、部長に抜擢されたのは複数の事業部門で実務経験のある職員である。事業部門の想いやノウハウとデジタル技術を融合させようという計画である。
就任早々の2022年3月に実施された「経営者のためのDX計画作成ワークショップ」(DXオープンラボ主催)を受講し、DX専門家派遣によるアドバイスをもとに、「DX推進計画」を作成した。作成した「DX推進計画」は、「組合員へのサービス向上」と「職員の働き方改善」が大きな柱となっている。
計画的にCRMを進化
CRMの更新は3段階に分けて進めている。フェーズ1(2023年)では、サーバーをデータセンターへ移行して情報セキュリティの向上を図っている。また、Google BigQueryとLooker Studioを利用して、データウェアハウス(データ倉庫)とビジネスインテリジェンス(データ分析)の環境を構築した。更に、コールセンターの機能強化も図っている。
フェーズ2(2024年)は、まず社内の管理資料作成の効率化を目指しており、Looker Studioの活用を幹部社員に徹底することで、幹部社員の事務作業を効率化させる予定である。これにより顧客に向き合う時間を増やし、事業を成長させることできると考えている。
フェーズ3(2025年)は、フェーズ2で幹部社員に生まれた時間を使ってデータマーケティングを本格的に展開して組合員のサービス利用度を高め、LTV(顧客生涯価値)の向上を目指すことにしている。
現場の意見を取り入れることで活用度を上げる
CRMの目的は、当組合が提供している様々なサービスをより多く利用してもらうことである。そのため、各事業部が使用している業務システムのデータをCRMに連携する必要がある。事業運営の効率化のためは、事業毎に組織を縦割りにする必要があるが、そうした組織を横断的に串刺しにする役割をDX推進部が担っている。
また、現場でのCRMの活用度合いを高めるためには、現場が使いやすく活用しやすいシステムにする必要がある。現場の意見を取り入れるために、DX推進部と現場が二人三脚でシステムの改善を繰り返すことで、これを実現しようとしている。このように、DX推進部が接着剤のような役割を果たしながら、DXを推進させている。
ITコーディネータから一言
当組合は、2007年に日本経営品質賞を受賞しているように、組合員(顧客)と向き合いながら事業を成長させており、その中核となるシステムがCRMである。今回の取り組みは、顧客価値を更に高めるためにCRMを更に進化させようというものであり、「DXは単なるデジタル化ではなく、顧客価値の向上や組織風土の変革をデジタル技術で実現すること」を目指しているものである。
一方、当組合のように大きな組織が変革(トランスフォーメーション)しようとすると、様々な軋轢が生まれ、遅々として進まない事例が多くみられる。しかし、当組合はDX推進部を中心に円滑に推進するようにしており、DX推進のお手本になる事例である。
取り組みにかかったコスト
コスト | 約1億円 |
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会社概要
社名 | 福井県民生活協同組合 |
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代表者 | 理事長 松宮 幹雄 |
所在地 | 福井市開発5丁目1603番 |
従業員数 | 1,647人 |
事業内容 | 食料品宅配事業、食料品店舗事業、高齢者介護事業、子育て支援事業 |