警備業の課題からVR研修コンテンツの開発へ

「警備業のDX」の下、仮想現実(VR)を企業内研修の場に生かしている株式会社アルハート。同社は教本や映像教材に頼っていた研修をVRシステム『NABULU(なぶる)』に移行、高い効果を上げています。福井弁の「なぶる」(=さわる)に由来するという、ユニークなネーミングの同システム。開発の背景や今後の展開を業務部の吉村圭太氏に伺いました。

VRで交通警備を再現
ヒヤリハットを未然回避

同社は2016(平成28)年、清掃、警備の2事業でスタート。現在、3つ目の事業としてVR関連商品の開発・販売を進めています。

警備業のDXを掲げ、VR事業を発足させたのは2021年12月。警備業は法律による規定の研修が定められ、現場でも法律遵守の業務が求められていますが、業務の慣れからしばしば、いわゆる「ヒヤリハット」を起こすことがあったのだそうです。

事故の危険性を体感できる研修方法はないかと、代表取締役の桶師康司氏らが検討したのがVRによる研修教材の制作。VRで交通誘導をシミュレーションし、ヒヤリハットにつながる事例を未然に防ぐことを考えたのです。

これまで清掃業務の管理アプリの企画・運用は行っていましたが、VRによるシステム開発は初めて。同社と外部パートナー企業計3社からなる開発体制を組み、関連法規や教本などを確認しながら、約半年かけて開発を進めました。

パッケージ商品で本格展開
「差別化要素になる」の声も

吉村氏によると、専用アプリと市販のVRゴーグルを組み合わせて使う同システムの導入効果はてきめんでした。「交通警備の経験がない人に、映像教材や教本だけで現場の空気感を伝えることは難しい。VRだと現場の危険性を体感しながら研修できます」と話します。ゴーグルで見ている画像を外部ディスプレイで共有できる機能もあり、研修者の理解度を指導者が把握できるのも特長です。

2022年5月の完成後、社外向けにもパッケージ商品として展開。YouTubeへの動画掲載、解説ホームページの公開、ダイレクトメールなどの販促活動を行い、同年末までに全国約50社に納品しました。納品先からは、「研修を複数人で行うことでコミュニケーションが活発になる」「警備のチームワークが良くなった」「求人の際、同業他社との差別化材料になる」などの声が寄せられています。

吉村氏は教育分野におけるVR市場の広がりに期待を寄せます。「映像教材の研修は受動的になりがちで、ロールプレイング形式は時間や予算、講師の手配など制約が多い。VRというとエンタテインメント分野に話題が集中しがちですが、実は教育分野での相性がとてもよいのではと考えます」

同社はサービス業や製造業などへの進出も視野に、助成金を活用した新たなコンテンツの開発も検討中。VRやDXなどの展示会にも積極的に出展の予定です。

会社概要

事業所名

株式会社アルハート

所在地

福井市問屋町3-1101

代表者

桶師康司氏

資本金

1000万円

事業内容

コーティング施工管理業、清掃業、警備業、VR開発・販売

従業員数

60

TEL

0776-63-5763

HP

https://ar-heart.com/

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