スマホを用いたアンケートで、観光客の動向をデジタルデータ化。

福井県の観光振興に取り組んでいる福井県観光連盟は、県内を訪れた観光客の現状をデータとして把握するためのアンケートキャンペーンを実施している。観光地に掲出したQRコードをスマートフォンで読み取る形式のアンケートにより、来県者の訪問目的や訪問場所、宿泊数、満足度などの動向を調査して数値化。得られたデータをマーケティング分析や、特定のターゲティングに対しキャンペーンを打つなど「稼ぐ観光」のための戦略や施策の立案などにつなげていく計画だ。

ポイント

  • 1経験と勘だのみだった観光政策を、数値化して戦略的に展開。

  • 2スマホを活用したアンケートで、観光客の入り込みの「中身」を明らかに。

  • 3将来はマーケティングやターゲティングだけにとどまらない、多角的なデータ活用を目指す。

全国に先駆けて、観光客の詳細データを収集・蓄積へ。

2024年春の北陸新幹線県内延伸に向け県が策定した「ふくい観光ビジョン」では、第一の基本戦略に「観光で『稼ぐ』」ことを掲げ、同年の県内観光消費額の目標を1,700億円に設定している。その「観光地域づくり」の舵取り役として、福井県観光連盟は2021(令和3)年3月、地域連携DMO(観光地域づくり法人)として登録された。

DMOは基礎的な役割・機能として「各種データ等の継続的な収集・分析、データに基づく明確なコンセプトに基づいた戦略(ブランディング)の策定」(観光庁)が求められる。しかし肝心のデータは、各市町などが実施したアンケートなどはあっても、県全体や市町間での共有や利用はされておらず「現状が全く数値化できていない」(観光地域づくりマネージャーの佐竹正範氏)のが現状だった。

さらに、公的な統計の観光入込客数や宿泊客数はあるものの、来県目的や目的地など入り込み後の動態がまったく把握できておらず、観光政策は事実上「観光事業者の肌感覚や経験などに基づく勘ピューター」(佐竹氏)頼みだった。そこで同協会では、戦略的な観光施策に活用するデータ収集のため、スマートフォン等を用いた来訪者アンケートの仕組みを構築し、観光関連事業者が適切にビジネスチャンスや、ターゲットとなる顧客層をつかむための情報を蓄積していくことにした。

観光客の属性をはじめ、行動や消費金額、満足度などのデータをスマホで調査。

アンケートは2022年2月に17カ所の観光エリアや道の駅で試験的に実施し、22年春から実施場所を約60~70カ所に拡大し本格実施していく予定である。

試験運用は「ふくい旅 答えてHAPPINESS(ハピネス)プレゼントキャンペーン」として22年2月1日~28日に、県内17カ所の観光エリアや道の駅などの施設で実施した。調査場所にはアンケートの回答フォームにつながるQRコードを印刷したポスターを掲示するとともにチラシやPOPなどを配置し、印刷されたコードを観光客が読み取って回答する。回答者には福井県グルメギフトカタログを抽選でプレゼント。複数箇所で回答しポイントを貯めると、より豪華なカタログに応募でき、積極的なアンケートへの協力を促す仕組みとなっている。

回答の際には最初に会員登録が必要で、氏名や性別、生年、住所、世帯収入、メールアドレスなどを入力する。アンケートは全26項目あり、県内での宿泊数や宿泊エリア、訪問目的、アンケート前後の訪問場所、交通手段などに加え、県内での消費金額や、観光地や県内で利用した交通手段の満足度も設問に加えられている。質問項目は県内市町のDMOや観光協会、観光の地域づくりを中心的に担う「プレーヤー」への聞き取りを反映して設定された。同一行程で2回目以降の質問は回答場所に関連する質問のみとするなど、わずらわしさを減らす工夫もされている。

データに基づき、ターゲットを絞り込んだマーケティングの実現を目指す。

試験運用では800件弱の回答が得られた。紙でのアンケートでは集計に1カ月以上要することも珍しくないが、スマホを使うことで結果が自動的に集計され、回答状況はリアルタイムで把握できる。また、データは一カ所に集約して蓄積されるため、夏休みや大型連休など特定の時節を指定しての絞り込みや、回答者の属性や旅行スタイル間でのクロス集計なども容易に行える。

試験運用での課題を修正した上で、22年春以降、継続的に実施するアンケートの本格運用をスタート。どの季節の、どのエリアへ、どんな人が、どのような目的で来訪しているかをアンケートにより明らかにしていく。そのデータに基づき、ターゲットを絞り込んだ観光商品の開発や、来訪者の居住地域エリアや年齢、家族形態など客層を定めた情報発信を展開していけるようにするのが目標。併せて観光客に消費を促すための施策づくりや、地域の魅力づくりにも結びつける。

多角的なデータの活用で、観光政策の戦略性を高める。

得られたデータはオープンデータ化し「マーケティングダッシュボード」としてネット上で共有・閲覧できるようにして、県観光連盟の会員らが常に追跡、分析、利用できるようにする方針。データを効果的に活用できるよう、情報の絞り込みやクロス集計などが簡単に実施できる機能も付加していく。

併せて、データの活用に慣れていない観光関係者向けの勉強会なども開催して、データの読み解き方や商品開発、情報発信の方法なども伝えていく予定だ。

また22年3月にリニューアルした福井県公式観光サイト「ふくいドットコム」の検索結果を来訪者のアンケートと関連付けて検証することも想定。観光客の動態を①旅行前の事前調査②ビッグデータに基づく実際の人出の傾向③実際に来訪した旅行者の動きの“中身”-と多重に検証することで、立体的、多角的なデータの活用も計画されている。

加えて、情報発信への活用にも期待がかかる。福井県のファン獲得を目指すとともに、リピーターを抽出してのプロモーションやモニターツアー、追加アンケートなどの展開を見込む。より個別のニーズに対応できる顧客関係管理(CRM)を取り入れた観光プロモーションへの発展も見据える。

今後の展望

ただ従来の観光政策のベースとなっていた「勘ピューター」には現場感覚が反映され、実はかなり精度が高かったことも事実。さらなる調査結果の蓄積により、現場の実感に数値的な裏付けを得られれば、戦略の策定に不可欠な仮説の設定と検証が可能となる。数値ベースの施策を展開し、効果の検証につなげることで、PDCAサイクルを確立するのが当面の目標。デジタル化の仕組みをフルに活かしつつ、観光の最前線に立つプレーヤーを支援するとともに、地域が一体となって稼げる力を引き出すための施策を展開していく。

観光地域づくりマネージャー 佐竹 正範 氏

取り組みにかかったコスト

コスト 非公開

相談先・業務委託先

業務委託先 福井放送株式会社 / 株式会社リクルート

会社概要

事業所名

公益社団法人福井県観光連盟

代表者

会長 山田義彦

所在地

福井市宝永2-4-10 福井県宝永分庁舎2階

従業員数

28人

業種

公益社団法人

県内各地の観光協会などで構成する公益社団法人。観光やコンベンションの振興のための情報発信や観光企画などを行うとともに、福井県のDMOとして観光地域の基盤づくりも担っている。

その他の事例集

事例一覧にもどる