「働きやすい環境」づくりを目指してDX推進。

靴のインターネット通販事業を手掛ける株式会社ザカモア。人が手動で行う作業を正確・高速に自動で処理するRPA(Robotic Process Automation)を導入し、大幅な業務の効率化を図っている。システムの導入にあたっては、作業の無駄、不必要な工程の洗い出しがまず必要で、デジタルツールの活用を契機に業務の見直しも進んだ。「働きやすい環境」や「どこでも働ける環境」の実現を掲げ、社員がいきいきと働くためのDXを推進している。

ポイント

  • 1最初に取り組んだビジネスチャットがDX推進の契機に。

  • 2RPA導入で社員の時間を節約。モチベーション向上につながる効果あり。

  • 3リモートワークを推奨し、どこにいても働ける環境づくりに取り組む。

チャットの利便性、DX化の足掛かりに

RPAに先立って、同社では無料のビジネスチャットを導入している。現在ではコミュニケーションツールとして活用する企業も多いが、中小企業としては早期の導入だった。最初は隣にいるのにあえて書き込むのは面倒との反応もあったそうだが「絶対必要」と感じた西村社長はパートを含めた社員全員で利用することに。3カ月間使ってみると、相手の状況を気にせずいつでも書き込める便利さが浸透、文字にすることで「言った、聞いていない」のコミュニケーションエラーもなくなった。

チャット内には、業務に直接関係のない「雑談部屋」も設けている。仕事以外の出来事や家族の食事風景の写真など何でも投稿してもらい、社員間のコミュニケーションにも役立てている。デジタル化というと堅苦しいが、まずは身近なところから遊び感覚で始めてみること。必ず「便利で使いやすい」と感じ、元には戻れないはずとの考えだ。
同社ではチャットツールの導入により業務のスピード感がアップし、その後のDX推進につながった。

RPA導入で社員の心身の負担軽減

同社がRPAを導入した時は、まだ一般的なツールとは言えず、初期費用で約50万円と毎月の使用料が必要だった。西村社長は、「パートを一人を雇うぐらいの気持ち」で思い切ったというが、現在は無料で使えるRPAツール「UiPath」が活躍する。
最初に目を付けたのは商品の発注作業。日々行われているFAXでの発注作業を省力化できないか、がスタートだった。現在は、システム間の在庫調整や、楽天やAmazonなど各モールで登録した新商品データのシステムへの移し替え、商品の入荷予定に合わせたバーコード発行など様々な業務をRPAがこなす。

例えば、発注業務では、発注一覧のデータを基に、メーカーごとの発注書を自動作成し、FAXで各社に送信する作業をRPAファイルを押すだけで実行できる。手作業で1時間かかっていた業務がRPAを導入したことで、他の作業を行う時間に企てることができるようになった。

また、システム間の在庫合わせもRPAを活用している。作業を担当していた社員からは、「約40分かかる作業を終業間際に行う必要があり、精神的な負担も大きかった。これを自動化できたので、非常に助かっている。」と言う声が聞かれた。
システムがフルに稼働する時間を避け、夜間に実行させれば、翌朝には完了していることから、社員が行う他の業務とのバッティングもなくなった。

知識、ノウハウ持った人材確保へ

一方、同社の課題は人材の確保・育成だ。シンプルな作業の設定なら比較的楽にできるのもRPAの特徴だが、複雑なフローの構築には、相応の知識やノウハウが必要となる。福井高専出身の社員が担当となり、RPA導入を後押ししてきたが、作業エラーが発生した時の対応など、プログラミングができる人材を増やすことも考えている。

RPA導入により社員の意識にも変化が見られた。「単純作業をRPAが行うことで、その時間を有効に使える」「発注は朝の50分間の作業がゼロになった。集中できる時間ができた」と社員のモチベーションも上がった。

7、8年前までは紙に鉛筆で手書きという超アナログだった。そこから物流、受注などをひとつひとつデジタル化していった。「アナログのままでやっていたら人手は今の倍は必要だった。DXを導入していなかったら、会社は残っていなかったと思う」と語る西村社長。今後も、現場の無駄を集めて省力化・自動化できる部分はデジタル技術を活用し、さらなる作業効率UPを目指す。

今後の展望

同社がRPA導入と同時に取り組もうとしているのがリモートワークの推進だ。「会社に来ないと仕事ができないのではなく、どこにいても働ける環境をつくりたい」と、社内でしかできないことを減らしていくため、業務フローの洗い出しを進めてきた。「やってもやらなくても良い仕事はやめる」と表現するように次々と無駄をそぎ落とし、業務を単純化。そのことが、スムーズなRPAの導入につながったと振り返る。

今年、県外に転居する女性社員にリモートワークでの仕事継続を提案した。育ててきた優秀な人材を手放したくない。これを機会に「どこにいても働ける」事例をつくり、社員にとって働きやすい環境を整える。このためにもデジタル化は大きな力になると、思いを強くする。

代表取締役社長 西村 拓朗 氏

取り組みにかかったコスト

コスト RPA導入: 約50万円

会社概要

事業所名

株式会社ザカモア

代表者

代表取締役社長 西村拓朗

所在地

坂井市春江町藤鷲塚40-35-2

従業員数

32人(パート含む)

業種

靴のインターネット通販

1955年、福井市森田に「個人商店 ニシムラ靴店」を構える。1989年に有限会社ファニーへ組織変更。大学生だった西村社長がネット通販に着目、2008年に楽天店、yahoo!ショッピング店、2011年Amazon店を開設。2012年、株式会社ザカモアに変更し社長に就任、事業拡大に取り組む。経営理念は「感動をつくる!」

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