基幹業務の“あるべき姿”を専門家と模索
まず、現状の業務のやり方を把握するために、現状分析を行いました。現状分析の結果、Microsoft Accessで構築した既存の業務システムを上手に活用しながら業務を運用していることが分かりました。このシステムは、従業員が代々改修を重ねながら運用しているものですが、過去に1度原因不明のエラーが発生した際には業務全体が停止したこともあり、このシステムを継続使用することは大きな経営リスクになることを認識しました。
一方で、システムを刷新することによる業務混乱などのリスクも考えられるため、作業時間が多くかかっていて改善効果が高いと思われる「受注」プロセスに絞って改善を進めることになりました。併せて、中長期的なDX化計画も作成することで、今後DXを推進する道筋も定めました。
コスパの高いDX活用への絞り込み
「受注」プロセスの改善を進めるにあたり「既存の業務システムとデータ連携しやすく、顧客も従業員も簡単で手間がない仕組み」を主眼に検討した結果、Excelを活用した「発注書」の作成を進めることにしました。
主要顧客に、従来から使用していた発注書の様式に近いExcelの発注書を渡し、顧客から受け取った発注書(Excel)を前述の業務システムに取り込むことで、業務の効率化を図るものです。お客様にご協力を頂くことになるので、過去の受注実績をもとに商品の再注文が簡単にできる工夫も盛り込みます。
改善効果としては、下記のようなことを見込んでいます。
①営業担当の受注票および作業指示書の作成を1日あたり1~2時間削減
②入力ミスの削減
③営業担当と製造部門の情報伝達のタイムラグの解消
④営業と製造部門の納期情報の共有
⑤ペーパーレス化
企業存続を見据えた中長期的DX化計画
既存の業務システムと複雑に絡み合った業務プロセスを刷新するには“システムも業務もまるごと1回で”入れ替える必要があります。そのためには、既存の業務と併行して準備を進めていくことがポイントです。社内の協力体制の構築をはじめ十分な情報共有、教育や業務のリハーサルを綿密に行ったうえでスムーズに移行していく必要があります。
今回の「受注」プロセス改善を最初の一歩として、大きな課題に挑戦するため中長期的に継続してDXを進めることになりました。同社は新たな収益の柱として自社開発商品のEC事業も展開しています。EC事業担当者が、Webマーケティングを実施しやすいECサイト構築環境を整備することも、計画に盛り込むことで経営基盤の安定化を目指します。
ITコーディネータから一言
DXは、導入するデジタルツールの話が先ではなく、DXを通してこの会社に集まる人がより働きやすく、それぞれが持つ知識をより共有しやすくして「会社を長く存続させたい」という想いを実現することです。
従業員が裁量を持ち、新たなチャレンジを歓迎する企業風土の同社は、事業継続の観点からも社内で活躍するDX人材を育成することが重要ととらえ、(公財)ふくい産業支援センターのIT研修も積極的に受講し、そこで得た知識・体験を社内に共有しています。
このような人たちが集まって形になる同社のDXの未来は明るいと信じています。
お話をお伺いした方
かかった経費(予算)
コスト | 8万円(人件費) |
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会社概要
事業所名 | 株式会社ササマタ |
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所在地 | 福井県鯖江市中野町49-7 |
代表者 | 岡本正治 |
従業員数 | 86名 |
業種(中分類) | 眼鏡部品製造業 |
事業内容 | 眼鏡部品の製造および販売 |