介護事業を知り尽くした事業経営者がITシステムを内製

元システムエンジニアの代表が介護事業を行う中で感じた非効率な業務を改善しようと、自らITシステムを構築した。そこには、「いわゆる裏方業務」を減らしてサービス利用者(顧客)と接する時間を増やすことで利用者の満足を向上させたいという想いと、一緒に働く職員の負担を軽減したいという想いが込められている。

kintoneで業務の合間にシステムを構築

新システム導入前は、FileMakerなどを使ってシステムを構築していたが、社外からの利用が出来なかったり、AppSheetやExcel・紙など複数のシステムが連携せず、不便があった。そこで、選択したのがクラウド型開発ツール「kintone」である。
介護業務の合間時間を利用して代表が約3か月で構築した新しいシステムは、電話メモや問い合わせ記録、支援経過記録などを含む「利用者台帳」をシステム化し、このデータをもとに、介護保険申請書や訪問介護計画書、ケアプランなどを半自動的に作成できるようになり、カレンダーやシフト表なども一括して移行した。
また、システムへの入力作業を効率よくできるように、様々な工夫がなされている。例えば、テンキー付キーボードの準備、カメラ撮影だけでの介護保険証等資料の保存、などである。音声入力など上手くいかなかった例もあったようだが、代表自らが介護事業に携わってるからこその気づきであり、職員からも好評である。

補助金の活用でIT導入が前進

ITシステム導入において費用負担が課題であると言われている。同社も同じ課題を感じていたが、国や県が実施している補助制度をうまく活用して構築を進めている。
知り合いの社会保険労務士や行政書士からの情報をもとに、活用できそうな補助金や助成金を選んでいる。これまで利用したものは、「業務改善助成金」(厚生労働省)や「ふくいDX加速化補助金」(ふくい産業支援センター)などがある。ネットワークカメラや無線LAN環境、今回のkintoneやプラグイン導入など、いずれも約半額が助成され、初期費用の負担を軽減できるため、ITシステムへの投資をする際の大きな後押しになっている。

ITシステムの導入に合わせて業務改善

ITシステムを導入すれば業務効率が向上するというのは、ある意味幻想である。ITシステムの能力を最大限に引き出すように業務改善を行うことも必要である。同社では、業務フローを作成して業務を可視化し、「誰でも行える作業」(単純作業)をIT化する方針のもと、業務の順序を入れ替えるなどの業務改善を行っている。例えば、職員間での業務引継ぎのための「申し送り」や「顧客カルテ」は紙媒体のほうが情報を共有しやすいため紙媒体として残している。従来は、紙媒体に書いてからITシステムに入力していたが、新システムではITシステムに入力したものをラベルプリンターで印刷して紙媒体に貼るという業務手順に変更している。
また、デジタル化は代表が率先して進めているが、「現場が導入しやすいとは?」と自問自答しながら、サービス責任者や若手などの協力を得て「女性やパートさんに配慮」したITシステムにしている。こうした取組みにより、事務作業時間を約20%削減できている。

出勤簿もシステム化。印刷すると紙でも使用できる。

ITコーディネータから一言

経営者がITシステムを構築できるという強みを活かして、デジタル化を進めている事例である。業務内容を熟知していることもあり、「痒い所に手が届く」システムを作ることが可能になるため、その効果は大きなものになる。
一方、こうした事例の場合、経営者が先走ってしまい、社員がついてこないというケースが見受けられるが、同社の場合はITシステム導入の際に社員をうまく巻き込んで、そうしたことが起きないように実現している。
更に特筆すべきは、こうしたノウハウを介護・福祉業界全体に広げようと「IT介護支援室」を立ち上げ、他社の支援も行っている点である。

取り組みにかかったコスト

コスト 非公開
補助金 DX加速化補助金

相談先

相談先 DX加速化補助金を活用

会社概要

事業所名

有限会社あんしん村グループ

所在地

福井市北四ツ居2丁目7-17

代表者

代表取締役 林 智之

従業員数

38名

事業内容・会社紹介

有料老人ホームの運営
高齢者住宅の運営
介護タクシーの運営
自宅介護に関する支援サービス

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