光センサーによる工作機の稼働データを人員配置にも活用

福井市大森町にある吉田機工は、五面加工機を使った大型金属加工を得意とする企業。同社が取り組んだのは加工機と光センサーを連携させた、加工機の稼働時間の「見える化」です。人事制度の整備も念頭に置いて進めたという同社のものづくりDX。導入の経緯や効果について、代表取締役の吉田誠氏に伺いました。

稼働率向上と人事整備 ものづくりDXを両面で

扱い品目の性質上、多品種小ロット生産の受注が大半という同社。そうした中で工作機の稼働率を上げることはかねてからの課題で、「そのためには、稼働時間、段取りのための停止時間、非常停止の時間をそれぞれ『見える化』することが必要でした」と振り返ります。

他方、吉田氏には見える化を人事制度に生かす考えもありました。作業者の工夫次第で稼働率も上下するからです。「段取りを工夫し、夜中に機械をうまく回している社員もいます。『私はこれだけやっている』という努力に対し、データに基づく正当な評価で応えたかった思いもありました」と吉田氏は語ります。同社のものづくりDXは、稼働率向上と正当な人事評価という二つの側面からの戦略でした。

そこで同社は、県の令和元年度「IoT・AI・ロボット等導入促進事業補助金」を活用し、工作機の稼働状況を見える化・蓄積するシステムを構築しました。加工機上部の積層信号灯に光センサーを外付けし、どの色が点灯しているかをサーバに送信。各色の点灯時間をグラフ状に表示させることで、加工機それぞれの稼働時間が一目で把握できるという仕組みです。

稼働開始から約3年。「当初のねらいどおりの効果です」と話す吉田氏は、付加価値の高い機械にスキルの高い社員を就かせるなど人員配置にも役立てています。「正当な評価で応えたかった」という人事制度の面でもシステムは貢献し、「稼働率と自身の処遇がつながっていることを社員間で共有でき、社内の一体感向上にもつながっています」と手応えをのぞかせます。

積極的にデジタル投資 図面検索システムも視野に

現在、社内のDX環境整備に年間250万円前後のデジタル投資を行い、CAD/CAMの導入を機にシステム部門も新たに設けました。同部門では加工機へのプログラム入力を手入力から一部自動入力に置き換える支援をするなど、ヒューマンエラーの減少に向けた取組みを進めています。

同社が次に予定するのは、過去の受注で蓄積された数万枚の図面をAIで検索するシステムの構築。納期や価格、付帯情報、リードタイムなどの情報を与えて図面を検索させることで、商談時などでのスピーディな対応を目指します。

DXに積極的に取り組む吉田氏は、業務改善のヒントを普段の生活やSNSなどからも得ているそうです。「AIの仕事と人間がすべき仕事の切り分けは確かな経営判断に欠かせません。新しいことに興味を持ち続けないといけないと感じますね」とDXへの考えをこう締めくくります。

会社概要

事業所名

株式会社吉田機工

所在地

福井市大森町108-3-10

代表者

吉田誠氏

資本金

1000万円

事業内容

マシニング加工、旋盤加工、製缶溶接加工

従業員数

24

TEL

0776-98-5678

HP

https://www.yoshida-kikou.co.jp/

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