ポイントカードのアプリ化とAIBeacon導入で、加盟店支援を促進。

福井県内事業者を中心に85店舗が加盟する協同組合福井ショッピングモールは、ショッピングセンター「フェアモール福井」の専門店街「ラブリーパートナーエルパ(通称エルパ)」を運営。若年層のカード離れやコロナ禍による消費動向の変化を背景に、会員用ポイントカードをアプリ化するとともに、スマートフォンなどの端末でユーザーの行動特性を把握できるAIBeaconを導入。2022年3月に運用を開始した。会員サービスの充実を図りながら、得られたデータを分析し、加盟店の営業支援への活用を目指す。

ポイント

  • 1ポイントカードのアプリ化で情報発信力を高め、会員サービスを向上させる。

  • 2会員アプリとAIBeaconで把握した来店者動向と買上データを分析し、ニーズを見える化。

  • 3情報を効果的に活用できるよう社外を交えたデータ分析のプロジェクト体制を整備。

「エルパアプリ」スタート!カードからの移行を促進。

エルパの来店者について近年指摘されていたのが高齢化だった。ポイントカードのデータで見る平均年齢はオープン時より20歳程高くなっている。そこで、5歳単位で年代別の会員数を調べたところ、20代以下の加入率がかなり低いことが判明。若い人の多くはキャッシュレス決済に移行し、来店してもカードを作らない傾向があるとわかった。

このような背景から、会員獲得と効果的な情報発信、消費動向などのデータ収集には、ポイントカードのアプリ化が必須と判断。非接触型の形態はコロナ防止対策の一つでもある。「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)」も活用してアプリ制作を進め、各店舗にアプリ用バーコードスキャナーを設置するなどレジシステムを変更した。試験運用を経て、2022年3月10日に運用開始。アプリ会員になると、過去10件分の購入履歴とポイントの動きが見られるなど、お客様も利便性がアップする。当面はカードと並行運用するが、ポイントプラスキャンペーンなどを展開して移行を促し、将来はアプリへの一本化を目指す。

AIBeaconで来店者動向を把握し、データを蓄積。

コロナ禍の影響で、惣菜販売など売上が伸びた店舗があるものの、滞在時間の減少など来場者の行動に変化が見られ、全体としては苦戦を強いられている。従来の集客対策は、不特定多数の人々に向けたテレビCMや新聞広告等だったが、今や若い世代を中心にこれらを見ない人が多い。一方、来場されているものの、何も購入せずに帰る人がかなり存在すると思われ、改善すべき課題となっていた。

そこで着目したのは、“来場しながら買い物をせずに帰る人を減らす”こと。来店を呼びかけるより、既に館内に来ていただいている来場者の動向をつかみ、購買に結び付けていくことが重要と考え、カードのアプリ化と同時に実施したのがAIBeaconの導入である。

AIBeaconは、設置した端末の周辺を通過したスマートフォンなどの存在をキャッチし、以後、その動きを追跡しデータとしてサーバーに蓄積する。端末の動きを通して人の動向を把握し、性別や年齢など属性の推察を可能にする。ユーザー個人の特定は一切しない。この取り組みを推進する同組合常務理事の佐々木国雄氏は「おおよそですが、来店者数や、滞在時間などがリアルタイムにわかるようになります」と導入のメリットを語る。AIBeaconの端末は既に館内数か所に設置され、データ取得を進めている。

データ分析の結果を各店舗にフィードバック。

カードのアプリ化とAIBeacon導入は、取り逃がしている来店者ニーズを把握し、購買に結びつけることが大きな目的だ。両者から取得したデータをさまざまな視点から分析し、数値化する。「解決策がすぐ見つかるわけではないが、現状を見える化することで、効果的方策の仮説がいくつか立てられる。それらを一つずつ検証することで、より確かな方策に近づける」と佐々木常務。これまでの感覚的予測より高い確率で取り逃がしているニーズにアプローチできるということだ。

データ分析に当たっては、協同組合の事務局にプロジェクトチームの設置を予定。福井商工会議所や福井県中小企業団体中央会の協力を得ながら分析担当者を育成する。アプリとAIBeaconのデータ分析結果を各店舗へフィードバックし、商品政策や販促手法など、より実効性の高いアドバイスで各店舗の営業を支援できるよう、計画を進めている。さらに、今後はレジシステムの入れ替えのタイミングで、お客様へのサービス向上や利便性アップを図りたいとも考えている。

今後の展望

分析の精度を上げるためには、取得するデータの蓄積を増やしていく必要がある。アプリ会員への移行を促し、分析能力も高めていくことが当面の課題。さらに、「エルパでもっと楽しんでいただきたい」との思いから、今回整備したシステムに連動させたいのがデジタルサイネージである。例えば、店舗前まで行かないと知り得ない情報を、人通りが多い場所のサイネージに表示し、来店者を誘導し買い物につなげていく。ときめきをくれるモノ、ちょっと贅沢なモノを買えるのが専門店。デジタルの力をさらに活用すれば、それぞれの店舗の特色をより魅力的かつタイムリーに発信できると考えている。

常務理事 佐々木 国雄 氏

取り組みにかかったコスト

コスト 非公開

相談先・業務委託先

相談先 (公財)ふくい産業支援センター

会社概要

事業所名

協同組合 福井ショッピングモール

代表者

代表理事 竹内邦夫

所在地

福井市大和田2丁目1212番地

従業員数

8人

業種

共同店舗運営

2000年10月、福井県を中心とする中小商業者が結集し設立。ユニーと共同運営するショッピングセンター「フェアモール福井」で、共同店舗「ラブリーパートナーエルパ」を運営する。福井県内事業者を中心に85店舗が加盟し、県内最大のショッピングセンターの専門店エリアとして親しまれている。 

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