店舗情報やスキルを共有し、顧客サービスの向上へつなげる。

「ホリブン」「ホリタさん」の愛称で親しまれている「ホリタ文具」を福井県内5店舗で展開するホリタ株式会社。「学ぶ・働くをもっとわくわく もっと便利に」を経営理念に、エンターテイメント性あふれる店舗で文房具や雑貨などを販売するお店づくりが好評だが、店舗の増加に伴い、各種情報や業務スキルの効率的な全社的共有が課題となってきた。時間と空間のムダを減らし、従業員がホリタらしさを高めるために注力できるよう、社内体制と店舗運営の双方からデジタル化に取り組んでいる。

ポイント

  • 1クラウド上のビジネスツールで、本部及び各店舗の情報を共有。

  • 2社員のノウハウを動画に収め、好きな時間に見られる全社員の教材に。

  • 3Googleサービスなど無料・安価なツールを効果的に活用。

Chatworkを連絡事項の共有に活用し、ZOOM会議で時間も削減。

ホリタが3店目をオープンしたのは2014年3月。それまで、本部と各店舗間の業務連絡は電話、FAX、回覧で行っていた。しかし、店舗が増え、シフト勤務制をとっているために不在の社員への連絡が遅れるなど、迅速な情報共有が困難になっていることを、堀田社長は痛感していた。

そこで、春江店開業を機に、業務連絡は全てクラウド上のビジネスチャットツール「Chatwork」を使うことにした。チャットツールはメッセージの送付はもちろん、グループメンバーと気軽にリアルタイムでやり取りができるコミュニケーションツールで、Chatwork活用により、各社員が連絡事項を都度書き込むことでスピーディーな情報伝達ができるようになった。今では、プロジェクトごとに60ものグループができ、活発な情報交換が行われている。同時にGoogleカレンダーの活用も開始し、出勤状況や各店舗のスケジュールも共有できるようになった。

ホリタは、経営理念をはじめ社内での価値観の共有を大事にしている。そのため、業務連絡をChatworkに一元化する一方、社長の思いを社員に伝えたり、テーマを決めて話し合ったりする会議を別途週1回開いていた。各店2人ずつ順番制で出席し、移動時間を費やしてでも、皆が同じ場所で言葉を交わすことを重要視していた。しかし、2020年のコロナ禍を機に、こうした会議はは全てではないがZoomに移行。Chatworkが既に浸透していたこともあり、十分なコミュニケーションを確保しながら、会議にかける手間や時間が削減できた。

巡回指導していた業務のノウハウをデジタルツールで見える化。

ホリタ文具の特徴は、店のレイアウトや陳列方法が店舗ごとに異なること。それぞれに個性を持たせ、店の使い分けも楽しんでもらいたいと考えている。ただし、共通に活かせるスキルやノウハウもあり、従業員全体のスキルアップを図るために、ノウハウを持った社員が出向いて指導していた。しかし、店舗と社員の増加にともない、マンパワー頼みの限界を実感するようにもなっていた。

そこで、業務ごとに秀でた社員のやり方を、社長と育成担当者が検討の上「標準」と認定。採用された社員のノウハウ説明をスマートフォンで動画撮影し、クラウド上の学習管理システム「Google Classroom」に設けた「ホリタ大學」にアップしたことで、誰もがいつでも学習できるようになった。講師に選ばれた社員も、スマートフォンであれば簡単に動画が撮影でき、でき上った動画は「わかりやすい」「都合の良い時に見られるので便利」と好評だ。

このほか、Googleサービスには無料・低額のツールが多く、カレンダーやClassroom に加え他のサービスも積極的に活用。Googleフォトによる各店の売場状況の共有、表作成・表計算ツール「Googleスプレッドシート」による仕入状況や棚の提案表などの共有、Googleドライブでの共有データの保存などにより、円滑で効率的な業務の推進と社員育成を図っている。

「ホリタの理念に共感する」を第一にIT人材を育成・確保したい。

Google Classroomを手掛ける本部社員はホリタ文具に魅力を感じて入社した一般社員である。ITの専門人材ではないが、ITに興味を持ち、ホリタのIT関連担当としてデジタル化の推進力となっている。2020年にはコロナ禍を機に教育委員会を発足。週1回のオンライン会議でデジタルを活用した社員育成について話し合い、さらなる取り組みを進めている。

堀田社長は、デジタル活用に当たり、産業支援センターやITの専門家に相談を重ねてきた。今後は、SEなどのIT人材も積極的に採用したい意向だが、「ホリタの目指すもの、哲学に共感していただけることが第一」であることに変わりはない。

社内体制のデジタル化を優先しながらも、店のエンターテインメント性を高めるデジタル化も構想中だ。「経費と人材が課題だが、やりたいことはたくさんある」と堀田社長。2021年には福井工業大学AI&IoTセンターと組んで、移動式モニターロボットによる接客の実証実験を実施。「実用化はまだまだ先だが、わくわくできて、少し先へ進んでいるイメージ打ち出すことが大事」と今後の展開に意欲を見せている。

今後の展望 

ECサイト開設やポイントカードのアプリ化を進め、将来は、POSなど他の要素とアプリとの連動も検討。2022年春には、武生中央公園に6店目となる「HORITA LIFE CANVAS」を新たな形態でオープン。ホリタが目指すのは、物を売るだけでなく、心ときめく体験を通して、豊かな時間を過ごせる空間を提供すること。そのために社員一人ひとりが、人にしかできないサービス力を向上させ、接客に集中できるよう、さらなるデジタル化を推進していく。

代表取締役社長 堀田 敏史 氏

取り組みにかかったコスト

コスト 非公開

相談先・業務委託先

相談先 (公財)ふくい産業支援センター、ITコーディネータ等の専門家

会社概要

事業所名

株式会社ホリタ

所在地

福井市大願寺3-9-1

従業員数

60人

業種

文房具、雑貨等小売業

1950年、福井市田原町商店街で創業。2000年のホリタ文具大願寺店開業以降、花堂店、春江店、鯖江店、エルパ店を展開し、2022年春、越前市に「HORITA LIFE CANVAS」をオープン予定。

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