受注サイトの構築と「お任せ」のデジタル化で販路拡大を目指す。

「子供たちには夢を、皆様には心の潤いを」を経営理念に、約4,000アイテムもの菓子や玩具などを販売する佐々木商店。卸売業者として地域の小売業を支えるとともに、自ら児童施設やイベントなどへの直販や小売店舗「みんなのお菓子市場」も展開している。そんな同社が、既存の基幹システムと小売用ECサイトと連携できるBtoBの受注サイト開設を目指すとともに、お任せメニューのデジタル化にもチャレンジする。

ポイント

  • 1デジタル化の推進で、受注事務の効率化とECサイトの売上アップを目指す。

  • 2受注サイト制作の経験から新たな課題と今後の方向性を見出す。

  • 3属人化している「お任せメニュー」のメニュー作成をシステム化したい。

データ受注へのシフトとECサイトの改善が課題

卸売りと小売りの両方を手掛ける佐々木商店では、受注、出荷、在庫管理、請求・入金などを一括管理できる基幹システムに受注データを入力している。顧客からの注文はデータで送られてくる他、ファックスよる注文も多い。卸し先の小売業者には高齢者が営む個人商店も多く、パソコンなどでのデータ注文に切り替えられないのが現状だ。ファックスによる注文は、社員が注文書を見て商品数などをキー入力しており、本作業の負担解消が課題となっている。

一方、同社には10年前に開設したECサイトがある。子どもから大人まで幅広いニーズに応える「おかしの詰め合わせ」と、定期的に企業等へ配達する「おやつの定期便」というセット商品を前面に出しながら、単品での注文も受け付けている。セット商品は同社の強みであるが、今後売上を伸ばすには、商品の選択法など、顧客のニーズにきめ細かく対応できる仕組みに改善する必要性も感じている。

これらを背景に、データによる受注へのシフト、より幅広い機能を持つECサイトの構築を視野にいれ、まず、BtoBの注文サイトの制作に取り組むことにした。

注文サイト構築の失敗から学ぶDXのアプローチ

BtoBの注文サイト構築に当たっては、最初から全ての商品を掲載し、本格運用を開始しようとすると、多くの時間と手間がかかってしまう。Webサイト作成のサービスが複数ある中で、ITの専門家にも相談の上、利用を決めたのは、専門的な知識がなくてもWebサイトを作れる「Jimdo」だった。Webサイト上のコンテンツを、部品を組み替えるような感覚で操作でき、経費は年間20,000円程度に抑えられる。「jimdo」の導入は初めてだったが、幸いパート社員の一人がSEの経験があり、同社員が主となってJimdoへの入力作業を進めていった。

卸売業は一般的に取り扱う商品アイテム数が多い。注文サイトには2,000~2,500アイテムを載せる予定で、まず300~500アイテムをJimdoに登録したが、コンテンツ数が多すぎたため、サイトを公開することができなかった。しかし、専門家のアドバイスで、簡単かつ安価なWebサイトのサービスを選択したため、時間や金額のロスは非常に少なかった。始める前は分からなかった課題を認識して次に進むことができ、引き続き注文サイトの構築を検討したいと前向きだ。この事例からも、DXを推進するには計画を立てて全てを一気に実施するのではなく、すぐにできるところから始め、まずはなるべく安価に利用できるサービスを試してみる、というアプローチの方がよいことがわかる。

「お任せメニュー」のメニュー作成のシステム化が課題

佐々木商店の大きな強みは、顧客の好み、アレルギー、予算といったニーズに合わせた「おかしの詰め合わせ」を提供できることだ。メニュー作りのノウハウを磨きながら、児童館で配るおやつや、祭りやイベント、バザーで配るお菓子セットなどの販売を長年手掛けている。さらにこのノウハウを活かし、10年程前に、企業などへ定期的にお菓子を届ける「おやつの定期便」をスタートした。

月1回5,000円など、期間と金額を決めて配達。お菓子の内容は基本お任せだが、要望に応じてアレルギー品目使用商品を除く、配達先の年代の違いによるお菓子の好みの傾向を考慮するなど、ニーズによるお菓子の組み合わせは多岐にわたる。「お任せメニューを、多数の顧客ごとに素早く組み立て用意するのは想像以上に難しい」と佐々木社長。前回と同じ商品は避ける、甘いものと辛いものをバランスよく入れる、新商品で新鮮味を出すなどが求められ、金額確認も必須だ。

本作業に従事できる社員はノウハウを持ったベテラン2名。以前に配達したお菓子の履歴はあるが、顧客の期待に応えると同時に、手早く詰め合わせるには“慣れ”が必要で、他の社員には難しい作業になっている。このように属人化した作業を、データを活用してPCでメニュー作成することで、誰でもできる作業にできないか検討している。例えば、顧客の要望に一致しない商品や、前回と同じ商品を選択すると警告が表示されるといった仕組みである。複雑な条件による多数の選択肢から、最も良い選択肢を探すこの作業はAIの活用も考えられ、今後の構築に向けて意欲を見せている。

今後の展望

豊富な品揃えと、顧客のニーズに合わせた「詰め合わせ」を提供できる強みを活かし、特に子どものおやつについて地域密着で販路開拓しつつ、全国への発信を目指す。都会在住の人の中には、地方業者の信頼性に不安を持つ人も多いため、安心感を与える注文サイトになるよう、専門家に相談しながら検討したいと考えている。また、外部機関のIT講座などを活用し、アプリ操作やECサイトの運営法など社員のスキルアップを図っていく方針である。

代表取締役社長 佐々木 啓至 氏

取り組みにかかったコスト

コスト 20,000円(Jimdoサービス等)

相談先・業務委託先

相談先 (公財)ふくい産業支援センター、ITコーディネータ等の有資格者

会社概要

事業所名

株式会社 佐々木商店

所在地

福井市高柳1丁目2102番地

従業員数

10人

業種

各種菓子等の卸売業・小売業・通信販売業

1947年創業。福井県内の小売店を中心に各種菓子製品を卸販売し、2007年以降、小売店舗「みんなのお菓子市場」を福井市と金沢市に開設。豊富な商品を活かし「おかしの詰め合わせ」の注文販売にも注力する。

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