多様化する来訪客のニーズに「観光DX」で応える

福井県内有数の観光地、東尋坊。近年は北陸新幹線開業や訪日観光客の増加なども背景に来訪客の属性が多様化しています。そうした動きに応えるべく、ICTを生かした接客の質向上に取り組むのが東尋坊観光遊覧船株式会社。いわば「観光DX」とも言える同社のチャレンジ。その成果を代表取締役の阪本浩三氏に伺いました。

県の助成金事業活用で4カ国語案内など整備

東尋坊来訪客の属性変化を背景に、同社が観光DXを意識しだしたのは今から10年ほど前。かつて団体客中心だった来訪客は団体から個人・グループ中心となり、台湾からの観光客が多かったが近年では、各国からの外国人観光客も増えてきました。観光船事業を展開する同社にとって、多様化する来訪客への対応は喫緊の課題でした。

そこで同社は接客の質向上に向け、デジタルサイネージ、遊覧ルートの見所を案内するスマホアプリ、音声ガイドなどを整備する「観光DX」の取組みを計画。県の平成31年度『おもてなし産業魅力向上支援事業助成金』を受け、プロジェクトを進めていきました。

デジタルサイネージはチケット売り場に設置。料金、時刻表、周辺施設とのお得なセット券などを一定時間ごとに切り替えながら表示する機器で、4カ国語に対応する特徴を持ちます。

ガイドアプリは遊覧ルートの地図画面を軸に構成。遊覧船のルートに沿って注目スポットがマッピングされ、それぞれをタップすると詳細情報が現れる仕組みです。スマホの設定言語に合わせて詳細情報の表示言語も変わる機能も盛り込みました。

音声ガイドの制作ではネイティブスピーカーを起用するという工夫も。聴き取りやすさを考慮するとともに、汎用のオーディオプレーヤーを活用することで導入コストを抑えました。

来訪客の利便性向上と業務効率化を両輪で

観光DXといえば、キャッシュレス決済への対応も利便性向上という観点から欠かせないポイント。近年は現金を持たず訪れる遊覧船利用客も増えているといい、バーコード決済など幅広いプラットフォームに対応する体制を整えました。阪本氏は「大手旅行サイトで事前にチケットを購入するお客さまも増えましたね。たしかに決済手数料負担は避けられませんが、お客さまのニーズに応えることが優先です」と話します。

これら一連の取り組みが功を奏し窓口業務の効率は向上。訪日観光客への応対、チケット販売もこれまで以上に手際よく行えるようになりました。

北陸新幹線福井・敦賀開業まであと約1年。開業により東尋坊の年間来訪客の3割の増加が見込まれ「コロナも収束しつつあり客足が戻ってきた実感があります。東尋坊は『坂井市観光ビジョン戦略基本計画』の重要拠点の一つで、100年に一度ともいえる生まれ変わりのチャンスの真っ最中です」。阪本氏はそう力を込め、ウェブサイトリニューアルや遊覧船の外観刷新など、東尋坊の魅力発信への投資を続ける考えをのぞかせます。

会社概要

事業所名

東尋坊観光遊覧船株式会社

所在地

坂井市三国町安島64-11

代表者

阪本浩三氏

資本金

1280万円

事業内容

観光船事業

従業員数

13

TEL

0776-81-3808

HP

http://www.toujinbou-yuransen.jp/

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