割引クーポンのサブスクサービス。開発はツールを活用し自社内で。

キャッチフレーズは「魔法のチケット」。チケティファイ株式会社は飲食店で使える割引クーポンを発行する会社で、定額の利用料で何回でも割引が受けられるサービス「ticketify eat(チケティファイイート)」を、福井県内を中心に展開している。

コロナ禍で困窮する飲食店支援のための、割引サービスの“サブスクリプション”としてスタート。アプリ化による利便性向上や利用業種の拡大を図るとともに、将来的にはデータ活用よるサービス展開も視野に入れ、地域社会で多様な役割を担うサービスとしての定着を図っている。

ポイント

  • 1割引クーポンをQRコードでデジタル化して、シンプルで使いやすいサービスに。

  • 2ロー/ノーコードの既存開発ツールの活用でシステムを自社開発。

  • 3アプリ化による技術改善や蓄積したデータ活用などで、利用業種やサービス内容も拡大へ。

飲食店救済のため、デジタル化した割引クーポン事業をスタート。

「チケティファイ株式会社」は、代表取締役の高野葵氏が2019年10月に創業したベンチャー企業。2020年春に新型コロナウイルスが拡大する中、困窮する飲食店を救いたいとの思いから、同年3月からテイクアウト誘客のためのWebサイト制作を開始した。初期費用ゼロで、低価格の月額管理費制の料金体系。管理費の半額はお食事券として販売して店舗に還元される仕組みとした。

その後、飲食店支援をさらに発展させる手段として割引クーポンに着目した。割引サービスを利用する登録会員は個人の場合一カ月980円~の利用料を払うことで、飲食額に応じて300円~1500円の割引を何回でも受けられるというサブスクリプションサービスを考案。「ふく割」や「GoToEat」などコロナ禍で割引クーポンの利用が浸透したのを追い風に、こうした他のクーポンとの同時利用も可能な点も特徴とした。一方の飲食店側には、「割引補助」として一定額を同社が補償することで導入の負担を抑え、集客サービスとして活用してもらう仕組みとした。

2021年9月、割引を受けられる提携を結んだ飲食店(参加店)は坂井市内の8店舗、登録会員は600人で「チケティファイイート」のサービスをスタートさせた。

QRコードの活用で、サービス利用の記録・請求をデータとして送信。

一般的な割引クーポンは、サービスに参加する店舗側がカードなどの会員証の提示を受け、定期的に割引実績を運営事務局に報告・請求する仕組みで運営される。しかし、それでは店舗側、事務局側双方に事務作業の負担が大きい。事業化に向けてふくい産業支援センターの担当者と話をする中で「サービスを、電子化してはどうか」とのアドバイスを受けたこともあり、高野代表は、書類や人的作業で行われていた集計や請求などの事務を、デジタル化するサービスの構築に取り組んだ。

具体的にはサービスの利用申し込みをした「登録会員」に、プラスチックカードにQRコードを印刷した「PASSカード」を発行。そのカードを参加店で会計時に提示すると、店がスマートフォンなどでコードを読み取って割引が受けられる。

参加店のQRコード読み取りには専用アプリなどが不要で、チケティファイが制作した参加店向けの読み取り用Webサイトで行う。会計担当者がスマートフォンなどでサイトを開くとカメラが起動し、コードの読み取りを自動的に行える。

仕組みは簡単で、カード自体も従来どおりプラスチックカードを使用しているが、クーポン利用や割引額の履歴がインターネットを通じて即時チケティファイに送信される点がポイントだ。

デジタル化で事務負担が軽減し、データ活用の可能性も広がる。

店舗毎の利用状況はチケティファイ側で電子化されたデータとしてリアルタイムで自動的に集計され、参加店には後日、一定額が「割引補助」として月単位でチケティファイから支払われる。利用実績や領収書などを取りまとめて事務局に送付する事務が不要で、参加店の負担が大幅に軽減される。割引実績が電子的な履歴として残るため、不正請求などをしづらいといったメリットも生まれる。

事務負担はチケティファイ側でも軽減され、割引実績の集計や割引補助金の入金などの運営業務は高野代表一人で対応。他の従業員5人は飲食店訪問などの営業業務に振り向ける。

さらに将来的には、割引サービスの利用実績から蓄積されたデータの活用にも期待が高まる。地域・店舗ごとの客層などを分析し、参加店への営業指針を提示したり、エリアや客層、個人それぞれにターゲットを絞り込んだ営業戦略を展開したりと、新たなサービスや事業も可能になる。

ロー/ノーコードツールの活用で、システムやアプリを自社開発。

サービスのWebサイトやシステムは高野代表が、既存のローコード、ノーコードツールを活用してほぼ一人で開発した。QRコードで読み取った割引履歴などのデータ管理にはクラウドのデータベースサービスを利用し、サービスのサイト制作ではウェブアプリ作成ツールを利用して店舗情報や使い方などの情報提供での使い勝手を高めた。またWebサイトの制作はノーコードの作成ツール「Wix.com」も使用。ドラッグ&ドロップで感覚的にサイトが作成できツールで、更新などの作業を専門知識のない人でも担当しやすく、常にバージョンアップが図れる点も採用した理由だという。

2022年春からは、プラスチックカードを廃止してスマホアプリ上でのサービスに移行するが、アプリ開発はApple社のアプリ開発ツール「Xcode」を用いて内製している。高野代表は「最近は使いやすいツールがそろっており、未経験者でも少しの勉強でアプリの開発などができる」と語る。

サービス開始から約半年を経過した2022年2月時点で、割引サービスの参加店は福井市を中心に約130店にまで拡大し、登録会員も約2700人まで増加。法人の福利厚生としての導入も進み、登録会員のうち約半数の約1000人は、企業など約30社の法人契約が占める。福井市中心市街地に勤務する人たちのランチ利用や、退勤後や休日の外食で利用されている。

参加店からは「集客に役立っている」という声が寄せられるとともに、同一店舗で複数回利用するリピーター獲得につながったという実績も報告されている。今後はさらに参加店、登録会員の拡大を目指すとともに、アパレルやショッピングセンターなど小売業での割引サービス開始も視野に入れなど、対象業種の拡大など、多様なニーズの取り込みも図っていく。

今後の展望

さらなるサービスの普及に向け、利便性の向上に務める。2022年春には、カードを廃止してスマートフォンアプリ上でのサービスに移行する準備を進めている。従来のカードは発行までに数日を要する場合もあり、新規の利用機会を逃すこともあったため、店頭でダウンロードしてすぐに使えるアプリに転換し、より多くの人が必要な時に割引サービスを利用できるよう改善を図る予定。

利用業種の拡大などで多様なサービス活用方法を提案していく。福井県内では全国的に成功事例とされる「ふく割」をはじめコロナ対策のための割引サービスが広く定着しており、各種支援事業終了後の受け皿となる割引サービスとしてのポジションを狙って事業の拡大を図る。

代表取締役 高野 葵 氏

取り組みにかかったコスト

コスト 30万円(カード製作、販促物等)

会社概要

事業所名

チケティファイ株式会社

所在地

坂井市三国町宿2-5-21 2F

従業員数

6人

業種

WEBサービス業、飲食及び喫茶営業、プロデュース業

福井工業大学学生の髙野葵さんが創業。「チケティファイイート」のほか、福井市中央公園での遊休スペース活用事業「福井の遊び場 | +PARCO 」の運営にも携わっている。

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