営業支援システムのサポートで、顧客目線の営業に注力。

保育園や幼稚園などで用いられる教材や遊具の開発から販売までを担うジャクエツ。園舎や公園の設計なども手掛け、商材は多岐に渡る。優れたデザインや取り組みで受賞した国内外の賞は100を超え、2021年度は、経済産業省「知財功労賞」経済産業大臣表彰(デザイン経営企業)を受賞した。同社では、従来、営業担当あるいは営業店ごとに情報や営業のノウハウを持っていたが、2020年8月に顧客関係管理クラウドシステム「Salesforce」を導入。担当者が蓄積した顧客情報や案件の進捗状況、営業のノウハウなどを全社で共有し活用を図っている。

ポイント

  • 1ノーコードツールにより、会社全体で単体業務システムを内製化。

  • 2業務単体の管理から、案件全体の管理をシステムで。

  • 3情報をシステムに入力し、状況やノウハウの共有をスムーズに。

紙の業務からノーコードツールによる業務システムの内製化へ

保育園や幼稚園を顧客の中心とするジャクエツでは、長年、定期的に顧客を訪問するルートセールスが基本で、伝票や報告書は手書きだった。営業店から本社への出荷依頼伝票は郵送。急ぎの出荷の際に使用するファックス用紙は年間2万枚以上に及んでいた。

そのような中で、業務のデジタル化に取り組み始めたのは7年前。プログラミングの知識がなくても手軽にアプリ制作ができるノーコードのクラウドサービス「kintone」を導入し、業務連絡をはじめ、それまで紙を使っていた集計表作成や会議室の予約など、さまざまな場面での活用が進んでいった。

2018年には受注・売上を管理する基幹システムを整備。さらにIT化したことで、営業担当が毎日行っていた電卓計算や伝票書きが不要になった。社員たちは、便利さを体験しながらデジタルシステムに慣れて行き、このプロセスが、次に導入する「Salesforce」への対応をスムーズなものにした。

顧客情報や成功事例などをリアルタイムに共有。

さらに営業業務の効率化を図り、個々の担当者が持つ情報を全社員で共有しようと導入したのが顧客管理型クラウドシステム「Salesforce」だ。システム導入に向けて2019年8月より本社に情報システム課を設置、12月にシステム構築をスタートし、2020年4月からの仮運用を経て8月に本稼働を開始した。本稼働に合わせてシステムのプログラム管理ができる経験者1名を採用。また、システム構築のための要件を検討する際は、営業店店長とリーダークラスの若手社員にも意見を求めて現場の声を反映させている。

Salesforce導入は、各営業担当が蓄積している顧客情報や経験を基に培ったノウハウなどを会社の財産と捉えてのことだ。営業担当の手帳や頭の中にあるこれらは、他の案件や若手社員のヒントにもなる。さらに、案件ごとの進捗を店長などが把握できることで、トラブルやクレームの未然防止にもつながる。各営業担当のノウハウ、顧客との商談履歴、案件の管理状況などの全社共有がSalesforceで可能になった。

Salesforceにはチャット機能があり、例えば、顧客に喜ばれた提案内容や、補助金を利用してできる取り組みなどを書き込めば、スピーディーに他店の社員に伝わり、新たな提案に活用できる。

また、Salesforceは受注・売上管理の基幹システムと連携され、売上、顧客ごとの注文状況、目標達成状況などがリアルタイムにわかる。前年との比較も可能で、さまざまな視点で営業をサポートしている。

新しいシステムを定着させ、顧客サービスの向上につなげる。

Salesforce稼働後は、各支店担当は顧客情報や案件の進捗などを入力する必要があるが、手間を増やす変化を社員に受け入れてもらうのは容易ではない。そのため、本社担当や各店長が本業務の重要性を説明して入力を促し、入力された案件を人事考課で評価するよう工夫した。これが功を奏したのか、新人からベテランまでの幅広い社員が成功体験を紹介するなど全社員が参考になる好事例の投稿が増加。Salesforceに毎日ログインする社員の割合が95%を超えるようになった。

Salesforceの稼働から1年半以上経過し、見えてきた課題もある。現状は、顧客からの相談、現場調査、見積り作成、提案、成約というジャクエツ側の視点で流れるステップになっているが、取り扱っている商材が多岐に渡ることもあり、会社からの提案やスケジュールが顧客のニーズにマッチしているかどうかはつかめない。

そこで、顧客視点で考え、顧客の求めている提案を、最適なタイミングでアプローチできるようなステップに改善する。例えば、店長や本社社員がサポートするなど、チームで顧客の課題解決に当たっていくことも考えられる。

デジタル化が目指すもの、そして情報システム課の役割は、営業担当が顧客のために少しでも多くの時間を使える環境を作ること。現在のところSalesforceは報告や管理ツールという認識が強いが、最終目的は、仕事の質・量を変化させ、やりがいや働く意欲を高め、顧客への質の高いサービスにつなげることである。

今後の展望

この先求められる保育環境は、教材や遊具が豊富なことよりも、管理が行き届き安心安全であることだ。心地よく、皆が集まりたくなる場所を作れるよう、施設やデータを管理する保育所サービスの展開を検討していきたい。また、IoTの時代が訪れる中、調査機関と連携し、教材や保育といった“子どもの育ち”の分野で、デジタル技術を活用した調査研究を始めている。

左:管理本部 情報システム課 小島 新悟 氏
右:営業本部 経営企画室   赤石 洋平 氏

相談先・業務委託先

相談先 (公財)ふくい産業支援センター

会社概要

事業所名

株式会社 ジャクエツ

代表者

代表取締役 徳本達郎

所在地

敦賀市若葉町2-1770(福井本社)

従業員数

658人

業種

保育教材の企画・開発・製造、保育施設等の設計・コンサルティング

1916年創業。早翠幼稚園開設とともに保育教材・教具の製造を開始。2022年3月現在、全国66か所に営業店を設け、保育関連製品の開発・製造、施設設計などを手掛けている。

その他の事例集

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