次世代を担う若手社員をDX人材に育成する社内研修を実施

同社は社長から出された『すべての事業において、利益を創出していく為には、顧客価値の向上・競争優位獲得や高い生産性が求められる、その手段として「IT」をいかに活用するかが重要と考えている』との方針を踏まえ、社長室のメンバーが中心となり、「DX人材育成研修」を企画し、運営を行っている。
次世代の事業部長の育成も当研修の目的で、研修に参加するのは社内で公募した35歳以下の若手社員。自ら立候補して参加しているため、高いモチベーションを持って研修に参加している。

企画部門が自ら社外研修を受講して研修内容を検討

社長の方針を踏まえ、IPAが作成した「デジタルスキル標準」を参考に、DX人材像を明確化するとともに、研修内容を企画するために、DXオープンラボに相談するなど情報収集を行った。
そうした中、2021年にDX人材育成を目的とした「ふくい企業若手人財育成研修会」(福井市が主催)の開催を知り、社長室のメンバー2名で受講した。この研修の内容をもとに、社内研修の内容を企画し、研修を開始することとなった。同社では、これまでも人材育成に力を入れており、階層別に求められる能力を定義し、積極的に社内研修・社外研修を受講している。こうした経験をもとに、研修のやりっ放しではなく、研修後のフォローの重要性を痛感しており、社長室のメンバーが研修後のフォローも行う内容になっている。

デジタル技術の習得ではなく事業変革を目的とした研修

「DX人材育成」と言うと、デジタル技術の習得を目的としたものをイメージするが、同社ではデジタルで事業変革ができる人材を「DX人材」と定義し、「DX によるビジネスモデル変革・新ビジネスの企画ができる人材の基盤づくり」を目的とした研修内容としている。
研修1年目の2022年は、「既存事業の現状認識と課題発見力」・「デジタル技術を活用した、業務プロセス改善の着想力・企画構想力」の習得を目指し、ビジネスモデルやマーケティングなどに関する知識と具体的な実現方法を座学で学び、研修中のグループ演習では同社を変革するための課題に取り組み、「DX計画書」の作成を行った。
2年目の2023年は、「DX計画書」を具体的に展開・実践するための研修内容とし、デジタルを活用した業務プロセスの改善に取り組んでいる。

研修の成果が全社に展開され組織風土の改革へ

当研修は62期全社方針[2022年]に示し、全社員に伝えられている。研修の成果は、各部門の部門計画に盛り込まれ、事業としての成果に発展させようとしている。また、この研修で育った若手社員が、将来幹部社員になったときに、更に大きな成果を出すことが期待されている。
一方、今回の研修の受講生は、自ら立候補して参加しているため改革意識も高い。また、若い世代のためデジタル技術の活用にも抵抗感がなく、デジタルを使った改革をどんどん進めようとしている。
こうした姿勢が、研修を受講していない社員、特に上の世代に好影響をもたらしており、上の世代からも同様の研修を企画してほしいとの声が出ている。こうした好循環が生まれることで、組織風土が大きく変化し、企業の更なる成長が見込まれる。

ITコーディネータから一言

同社は、早くから社内IT部門が存在し、デジタル技術に長けた人材を雇用するなど、IT化の先進的な企業である。DXは単なるデジタル化ではなく、顧客価値の向上や組織風土の変革をデジタル技術で実現することであるが、同社の事例は、これまでの「事務処理の効率化のためのIT活用」から、「顧客価値の向上のためのデジタル活用」へと、新たに舵を切ろうとしている取り組みである。
DXの推進が社長の全社方針に盛り込まれ、それを実現するために企画部門が計画し、全社一丸となって取り組んでいる様は、DX推進の好事例である。

取り組みにかかったコスト

コスト 約120万円(1年目)・140万円(2年目)

会社概要

社名

山金工業株式会社

代表者

代表取締役社長 山下 真寛

所在地

福井県福井市左内町4-15

従業員数

258名

事業内容

ワークテーブル・ワゴン・ラックなどの工業用の収納商品から引出し・オープン書庫などのオフィス用、公共施設用の収納商品の製造・販売
学校・病院・福祉施設や一般建物の間仕切やドアなどの建材商品の製造販売
公共施設やオフィスにおける快適な空間や業務効率化に必要な家具や什器、耐火金庫などの販売

受賞歴

創業永年企業表彰 創業110周年

その他の事例集

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