ポイント
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1器に素材を入れた状態で加熱料理し、熱々、できたての食事を提供
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2加熱調理をプログラム化し、調理を自動制御
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3献立作成から発注までを自動化する献立管理システムも搭載
越前漆器の伝統の技とDXで新しい食事提供の方法を提案。
2000年代から病院や介護施設向け食器の製造販売に力を入れた同社。福井大学との共同研究で漆器の技を応用したIH加熱対応型の食器を開発し、日本各地に販路を広げてきました。その中で同社が注目したのは、病院給食に用いられるクックチルシステムの調理工程の多さです。一度調理した料理を冷却し、食べる直前に盛り付けて再加熱するため、人手やコストがかかるという課題がありました。「それなら下処理した生の食材を器に盛りつけてトレーにセットし、加熱調理ができたらいいのでは」。そう考えた下村氏は新しい調理システムの開発に挑戦。関西電力との共同研究の成果をもとに、個別提供・3点同時調理・自動加熱でできたての美味しさを届けるシステム「ディッシュクック」を開発しました。
現場の業務効率化とコストダウンをサポート。
「ディッシュクック」は自社開発したシステム、IHヒーターと専用食器、運用全般のサポートをワンパッケージで提供しています。月々の使用料を支払うことで7年間のメンテナンス保証が付き、食器のコーティングが劣化した場合の塗り替えにも応えます。
病院給食の現場は紙やFAXを使った伝達によるミスが多く、食材の発注業務や検品、カット作業など業務も煩雑です。スタッフが高齢だと入力や操作のミスも起きやすくなります。そのため同社では、クラウド型遠隔自動調理システムと管理栄養士のレシピによる献立ソフト、食材の受発注システムを構築。献立と人数を入力すると自動的に食材費の計算・発注ができ、調理もカット食材を盛り付けてセットすればボタンひとつで予約加熱できるようにしました。発注もカット食材のメーカーとシステムを連携することで受発注の事務や検品が効率化され、下準備の手間も削減。少人数で厨房を回す体制が作れるため、人件費のコストダウンも図れます。
充実したサポートで運用をアシスト。
システムの開発にあたってはSEと管理栄養士を雇用し、レストランのシェフを監修に迎え、美味しくて栄養のバランスが取れた献立づくりも追求しました。献立ソフトのデータベースは通常食と減塩食を併せて数千種類がラインナップされており、現場の声を聞きながらメニューの追加・改善が行われています。
トラブル対応の面でも、予備機を置いて故障に備えるほか、遠隔リモートによる操作サポート、衛生管理指導などの充実したフォローで運用を支援。セキュリティ対策の観点から施設の基幹システムとは切り離した独立したシステムにして、ウイルス感染や情報流出のリスクを抑える仕組みをとっています。
「ディッシュクック」は2022年3月から受注を開始し、北陸の病院や福祉施設を中心に導入が広がっています。現場からは「想像以上に簡単」、「予約ができて便利」、利用者からは「いつも温かくてうれしい」「食事が豪華」と喜ばれており、さらなる販路拡大の後押しになっています。
今後の展望
「ディッシュクック」は2023年4月に北電産業株式会社と販売代理店契約を結び、全国に向けて展開中です。業務用としては予約制のホテルの朝食などへの応用も見込めますが、今は火を使わず安全に調理ができる特性をいかして家庭用の開発を進めています。将来的には地域の医療機関で情報を共有するメディカルネットと連携して、病院や家族とコミュニケーションを取りながら美味しい食事で健康を維持するシステムを作りたいですね。美味しさやできたてを求める普遍的な価値観は変えずに、高齢化社会の課題を解決するお手伝いができればと思っています。(取材者:代表取締役社長 下村 昭夫 氏)
取り組みにかかったコスト
コスト | 非公開 |
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相談先
相談先 | 自社開発 |
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会社概要
社名 | 株式会社 下村漆器店 |
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代表者 | 下村昭夫 |
所在地 | 鯖江市片山町8-7 |
従業員数 | 19名 |
取扱品目 | 業務用漆器・家庭用漆器の製造販売 |