ポイント
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1図柄の型紙「紋紙」不要のデザインシステムを開発
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2工場の稼働状況を24時間リアルタイムで把握
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3データはすべて記録し、出荷後でも追跡調査を可能に
製品のトレーサビリティを明確にし、クレーム削減を目指す

大喜株式会社は、国内トップクラスのジャカード織物工場です。2000年代初頭から、大手自動車メーカーのカーシート開発に参入し、同時に業務の共通化を目指して、いち早くデザイン工程のIT化を実現しました。「紋紙」と呼ばれる型紙を使わず、コンピュータ上で制作したデザインをデータ化し、織機に直接送信するシステムを開発しました。
カーシートは商社から支給された糸で生産していますが、コスト面から海外製の糸の採用が増えるにつれ、糸の品質が原因で織傷が出やすくなってきました。「糸に原因があっても、証明できなければ織り手の責任になってしまう。製品の品質管理を徹底させるためにも、トレーサビリティを明確にし、原因を追究できる体制にしなければならないと思いました」と山本社長は振り返ります。
生産状況をリアルタイムで監視・記録する管理システムを開発

そこで同社は、生産管理と品質検査を連携させた独自のシステムの開発に取り組みました。共通化を重視し、まずメーカーごとに異なる糸の品番を自社の管理番号で統一。タグに記載されたバーコードを読み取れば、どの工程でどの作業が行われているのか追跡調査ができるようにしました。
経糸の準備工程(整経)には二重チェック式のセンサーシステムを設け、織る前に糸の汚れや欠陥を把握できるようにしました。これにより製織後の品質が向上し、検査時間の短縮につながっています。また、工場では全織機をモニタリングし、機械の稼働状況や経糸と緯糸の消費量、糸切れや機械の部品交換などのトラブルも、すべてリアルタイムで監視・記録が可能になりました。
生地が織り上がると、カルテとして出力されたデータをもとに検反を行い、検査過程で見つかった傷もシステムに入力するため、システムには詳細なデータが蓄積されていきます。
高い管理スキルが評価され、大手メーカーから選ばれる一社に

デザインから生産、検査まで一元管理を行うシステムが導入されたことで、出荷後でも製品の履歴がすぐに把握できるようになり、同社のクレーム対応力は格段に向上しました。同社の計測では、このシステムにより生産効率が約6%向上し、特に品質管理にかかる時間のロスが削減されました。また、糸の消費量をパソコン上で把握できるため、糸の発注・在庫管理も効率化され、余分な在庫を持たずに生産できる体制を維持できるようになりました。
「このシステムを開発したことで、品質に非常に厳しい自動車メーカーからの評価が高まり、他社との差別化が図れました。弊社が選ばれる決め手のひとつになっていると自負しています」と工場長は誇らしげに話します。
今後はAIなどの先端技術の活用も視野に

同社は、県内の織物業界でいち早くDXに成功しましたが、すべてをシステムに委ねているわけではありません。トラブル時にはブルー・イエロー・レッドのカードを使い、工程間のコミュニケーションを図っています。「機械を動かし続けて良いか、至急対策が必要か、色分けしたカードで緊急度を共有し対応を決めています」と工場長は説明します。製品のカルテは紙で出力しており、「アナログの方がミスを起こしにくい取組みは残し、システムの良さと組み合わせて機能させています」と話します。
システム運用開始から13年が経ち、検証と改善を重ねた結果、現状では特に大きな課題はないといいます。ただし、原材料の発注タイミングや納期の予測はまだ人の経験に頼っている部分が大きいため、今後はAIを活用して改善できる部分を検討したいと考えています。
専門家(ITコーディネータ)から一言
同社のデジタル化への取組みは2度の大きな転換期のときであり、いずれのデジタル化も経営に良い成果を生み出しています。
①現社長が経営を引き継いだとき(1993年頃):デザインのデジタル化
②カーシート事業に進出したとき(2006年頃):製造のデジタル化
事業継続への危機感がデジタル化のきっかけとなっており、「デジタルの力で会社を変える」という強い想いが良い結果につながっている要因と言えます。デジタルトランスフォーメーション(デジタルによる企業変容)の好事例です。
取り組みにかかったコスト
コスト | 導入費用: 約3,000万円(生産管理システム、品質検査管理システム等) 維持管理費用:年間約30万円 |
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相談先
相談先・活用施策 | ダイワボウ情報システム株式会社 |
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お話を伺った方(役職・氏名)
お話を伺った方(役職・氏名) | 代表取締役社長 山本 岳由 氏(中央)、専務取締役 山本 優子 氏(左)、営業・開発 山本 崚太 氏(右)
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会社概要

事業者名 | 大喜株式会社 |
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代表者 | 山本 岳由 |
所在地(住所) | 福井県坂井市丸岡町儀間16-18 |
従業員数 | 約30名 |
事業内容 | 自動車シート地、椅子張地などの製織 |
ジャカード織物の工場としては国内最大規模の生産体制を誇り、近年では発光ジャカード織物「LightWeave®」を開発。次世代型自動車等への用途展開を目指しています。