売上の向上と人手不足の解消につながる無人店舗をオープン

ポイント

  • 1無人店舗のオープンでスタッフを雇わなくても店舗拡大で売上増へ

  • 2販売データ活用で購入行動を分析し、商品企画力をアップ

  • 3無人店舗で客足は好調、今後は無人店舗での予約商品の受け取りも見据える

人手不足や売上減少を見据え、無人店舗のオープンを決意

 同社は、高級フルーツ販売とスイーツの製造販売を手がける老舗専門店です。2024年福井市にオープンした「イオンそよら福井開発店」において、「TOUCH TO GO」という無人決済システムを導入した完全無人店舗をオープンしました。

 導入の理由は、今後の人口減による売上の減少および人手不足の憂慮からです。以前から検討しており、福井市内のショッピングセンターで自動販売機による缶スイーツの実験販売を行い、店舗閉店時間帯の売上や屋内設置のメリットを検証していました。

 梅田氏は、「かねてから無人店舗に関心があり、設置場所を探していた」と語り、イオンそよら福井開発店への出店機会を活かして無人店舗のオープンを決定しました。TOUCH TO GOを選んだ決め手は、スタッフを配置しなくていいことや、専用アプリが不要で買い物客がセルフレジ感覚で利用できる点でした。

店舗内の各種データを分析して新しい商品展開を見出す

 同店舗は、2024年9月にオープンしてから、特に夕方以降の売上げが好調です。また、興味深いデータとして、1日の来店者数は少なくても、1人当たりの店内の滞在時間が多店舗に比べて長いことが分かりました。買い物客にとっては、自分で見て回れることで心理的なハードルが軽減され、じっくりと商品を選べる店舗になっているようです。

 また、果物スイーツなど消費期限の短い商品などを扱うため、商品の補充や入れ替えも重要です。売り場の棚には重量を測定するセンサーが取り付けられ、どの商品がいつ売れたか、どの商品が棚にないのかを本社から知ることができます。

 同店舗の販売データは、専用のPCに送られ随時確認が可能です。単なる売上管理に留まらず、販売タイミングや好まれる商品の傾向も把握できます。この結果、顧客層を分析でき、データに基づいた商品企画ができるようになりました。SNSとの相性の良さも判明し、SNS投稿後の反応的な来店や購買行動がデータにも表れています。

初めてでも支払いまでの手順が分かりやすい無人決済システム

 TOUCH TO GOは、店舗内のカメラと連携しており、買いたい商品のバーコード等を読み取らなくても、自動的にレジのカメラが買い物客と商品を認識してくれます。また、操作方法が分からなくても、レジからサポートセンターに連絡すれば対応してもらえます。現金以外にも、交通系ICカードやQR決済など、多様な支払方法に対応しています。

 無人決済システムの導入について、梅田氏は「有人店舗で3名分の人件費がかかることを考えると、5年での原価償却を見込んだ投資としてはいい選択」と話します。稼働時間が長い点が大きなメリットで、スタッフ募集や勤務シフト調整からも解放されます。

 また、この店舗は大型商業施設の中にあり、カメラも設置されているため盗難のリスクも低減されています。梅田氏は、「盗難で起こり得る被害額より、日々の人件費等の削減効果の方が圧倒的に大きい」と話します。

AI活用で店舗と買い物客の双方にメリットのある店舗作りへ

 同店舗は、入口にゲートがありますが、商品を見るだけならレジからゲートを開けて退店できるため、気軽に入れる店内に興味を持った人が多く来店します。そのおかげか、オープンから約2ヶ月で約1万人が来店するなど、客足は好調です。中でも、複数人のグループでの来店が多い傾向がみられました。梅田氏は、「無人店舗での購入のハードルが低くなれば利用者も増えます。しかし、どんな業種で何でも売れるわけではない。やはり商品に魅力があることが第一で、価格帯を訴求しSNSでの告知などに力を入れなくては」と先を見据えます。

 今後は、自社HPで果物スイーツ等の注文ができ、無人店舗で希望の時間帯に受け取るシステムも検討しています。有人店舗では受取時間に制約がありますが、無人店舗であれば施設の営業時間内はいつでも受け取ることができます。

 梅田氏は、「AIを活用することで、天候や売れ行きに応じて最適な商品陳列に変更できるのでは」と更なる店舗の進化に意気込みを見せます。

専門家(ITコーディネータ)から一言

 取材した際「会社の未来を考えて、今から手を打っている」というお言葉が印象的でした。また、「今は消費者が慣れていないが、いずれ多くの店舗で導入され慣れてくる」ともおっしゃっており、近未来を見据えた先駆的な取組み事例です。

 無人化によるコスト削減に注目されがちですが、データとして得られた顧客の購買行動をもとに商品の品揃えの改善を行うことで、売上の増加にも取り組んでいます。

 データ活用による競争力強化の好事例です。

取り組みにかかったコスト

コスト

非公開

相談先

相談先・活用施策

なし(自社で実施)

お話を伺った方(役職・氏名)

お話を伺った方(役職・氏名)

代表取締役  梅田  敬男

 

会社概要

事業者名

フルーツのウメダ(株式会社 梅田果実店)

代表者

梅田  敬男

所在地(住所)

福井市中央1丁目9番23号

従業員数

10名(パート・アルバイト含む)

事業内容

果物全般販売、果実加工品販売、飲食店運営

会社紹介・取扱品目・受賞歴など:
 福井で創業90年以上の歴史を持つ果物専門店です。「新鮮かつ豊富な品揃え」をモットーに、新鮮なフルーツギフトやスイーツを豊富に取り揃えており、お客様に提供しております。福井市内に3店舗(うち1店舗が無人店舗)を構え、石川県金沢市に1店舗、オンラインショップも運営しております。

その他の事例集

事例一覧にもどる