ポイント
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1サイトコントローラーで予約を一元管理し、二重予約を防止
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2宿泊予約サイトからの情報を報告用の統計資料等に活用
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3時期に合わせた価格設定やお問い合わせ対応にAIの活用を目指す
予約の受付や宿泊者の報告などの作業が積み重なり運営が困難に

勝山市にある県立恐竜博物館は、特に親子連れに人気な福井を代表する観光スポットですが、市内の宿泊施設は圧倒的に足りておらず、市外で宿泊する人が大半です。山場氏は、故郷勝山へのUターンを機に、社会問題化している空き家対策と地域活性化の両立を目指し、ふくい産業支援センターの「UIターン移住創業支援事業助成金」等を活用して、2023年に恐竜がテーマの宿泊所を、実家をリフォームして開業しました。
恐竜好きの親子連れに大人気で、親子3人で運営しているものの、事務作業の煩雑さに追われる日々が続いています。山場氏は、「予約情報は、宿泊予約サイトごとに形式や項目が違うので、予約の通知が来るとスマホからカレンダーアプリに情報を1件ずつ入力し、LINEなどで対応作業の指示をしていました」と不便さを感じていました。また、民泊(ゲストハウス)は定期的に宿泊者の人数や属性を報告しなければならず、集計などにかなりの手間がかかっていました。
サイトコントローラーで複数の宿泊予約サイトをまとめて管理

山場氏は、複数の宿泊予約サイトで客室の空きや宿泊価格、宿泊者の予約情報などを一元管理できるサイトコントローラーに着目し、「beds24」を導入しました。
導入前は、サイトごとに予約情報を確認して事務処理をしていたため、掲載する宿泊予約サイトが増えるほど、管理が複雑になるのが課題でした。サイトコントローラーを利用することで、キャンセル後の予約の再受付や満室時の予約停止を自動化することができました。さらに、登録情報をcsv形式(Excelで扱えるファイル形式)で出力することもできるため、報告のための統計資料の作成に活用しています。
また、DX推進の勉強として、ふくい産業支援センターの「ふくいDX経営塾」にも参加し、Googleの「Looker Studio」を活用して、データの分析や見える化を行う手法などを学びました。
事務作業の時間をお客様に合ったおもてなしの時間に

サイトコントローラーの導入を機に、予約受付と支払いの方法も見直しました。宿泊の予約・キャンセルは宿泊予約サイト経由のみとし、支払いも予約時の事前決済のみに変更しました。広報・集客は、宿泊予約サイトの施設紹介のページをメインとし、各サイト内で完結できる体制を整えました。
山場氏は、「電話による予約管理ミスや共有忘れが起きなくなったほか、事前決済に限定したことでレジや現金を置く必要がなくなり、予約管理や金銭管理にかかる作業がかなり軽減されました」と効果を実感しています。また、サイトコントローラーからの予約情報は、宿泊台帳のデータベースとして、備品や消耗品を効率よく準備するリストなどにも活用しています。
山場氏は、「今後はRPAなどで手入力作業の自動化を進め、事務作業にかかる時間をさらに削減し、スマホがあればどこででも予約情報を閲覧・共有し、仕事ができる環境を目指していきたい」と展望を語ります。
価格設定やお問い合わせの回答にAIの活用を

勝山市の宿泊施設は、祝前日や連休期間は満室になるものの、平日はほとんど予約が入らないという課題があります。対策として、繁忙期と閑散期の価格を柔軟に変えていくダイナミックプライシングの実施を検討しており、AIで価格を設定できないかと模索中です。山場氏は、「チェックインの受付時間など、よくあるお問い合わせもAIチャットボットが活用できると思っています。宿泊後の評価やレビューへの返答も、AIなどの活用である程度は自動的に対応していきたい」とAIの活用に積極的です。また、広報・集客ではSNSへのショート動画などの掲載にも挑戦してみたいと意気込みます。
山場氏は、「まずは事務作業のデジタル化を推進し、宿泊サービスの向上や農業関連の仕事に携われる時間を作ることが目標です。空き家・空き地・耕作放棄地対策という地域課題に取り組みながら、充実したセカンドライフを過ごすロールモデルになれれば」と目を輝かせました。
専門家(ITコーディネータ)から一言
宿泊施設の運営方針として、おもてなしなど顧客との関わりに従業員の時間を使い、事務作業はデジタル化で徹底的に効率化を図るという、あるべき姿を明確に意識したうえでデジタルを活用している好事例です。また、デジタル化によって得られる顧客や予約のデータを、顧客に合った準備などの対応でしっかりと活用しています。もともと何を目指していたのかという点で、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
取り組みにかかったコスト
コスト | 約200万円 |
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相談先
相談先・活用施策 | (公財)ふくい産業情報センター、勝山市 |
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お話を伺った方(役職・氏名)
お話を伺った方(役職・氏名) | 代表 山場 数範 氏(Dinosaur Agri)
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会社概要

事業者名 | Dinosaur Agri/Guesthouse |
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代表者 | 山場 数範(Dinosaur Agri) |
所在地(住所) | 勝山市昭和町3丁目1-43-5 |
従業員数 | 3名 |
事業内容 | 宿泊業 |
空き家・空き地・耕作放棄地の活用を通した地域課題の解決を目指し、相続した土地や家屋を利用した、農業体験もできる恐竜が満載の一棟貸し宿です。さらに実家をリノベーションした恐竜宿泊所も併設し、口コミサイトで高評価を得ています。