ポイント
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1教育プログラムで学び、ITが苦手でもアプリを作れるように
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2まずはバックオフィス業務の効率化を目指し、年間300時間を削減
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3自作アプリの運用を広げ、五目亭公式アプリの提供を目指す
属人的で作業の多さが課題だった紙でのバックオフィス業務

福井市と坂井市に飲食店を展開する同社は、約6年前からExcelでのシフト管理やPOSレジの導入など、業務のデジタル化に取り組んできました。五十嵐氏は、「一番の課題は紙ベースの事務作業ですが、なかなか手を付けられずにいました。長年にわたり属人化された状態が続き、効率の面でも改善する必要がありました。」と語ります。以前は、各店舗で売上などの営業日報を紙に記入し、タイムカードとあわせて本部にFAXで送信し、その内容を本部でExcelに入力して差異がないかを確認するという手法でした。
五十嵐氏は、「システム導入にかかる費用が高額なことや、店舗運営における優先度が低いと考えていたことから後回しになっていましたが、店舗運営改善のためにもあきらめるわけにはいかないと考えていました。」と振り返ります。どのように進めていいか分からない中で、ふくい産業支援センターからノーコードツールの教育プログラムを紹介され、この機に取り組んでみようと自ら参加しました。
営業日報や勤怠管理のアプリをノーコードツールで内製化

五十嵐氏は、アプリを簡単に構築できるノーコードツール「Adalo」で、業務アプリの自作ができるようになる教育プログラムを自ら受講しました。プログラミングやアプリ開発の知識はほとんどない状態からのスタートでしたが、充実したサポートもあり約2ヶ月で営業日報と勤怠管理のアプリを自作できるまでになりました。
日報とタイムカードは、従業員が店舗で使用しているスマートフォン型の注文端末から入力します。五十嵐氏は、「タブレットも考えましたが、年配の方でもスマホは使い慣れていますし、仕事で使い慣れている注文端末を使うことで、抵抗なくアプリに移行できるようにしました」と戦略を語ります。入力する項目は最小限に絞り、これまで計算機で算出していた項目はすべて自動計算にしました。前年の実績と比較でき、数値の入力ミスを防ぐ機能も加えました。表示される文字は、年配のスタッフに配慮して大きめにして、活用しやすいように工夫しました。
事務作業の時間をお客様へのサービス向上の時間へ

営業日報アプリは、2025年3月にまず1店舗で試験導入することを目指し、現在はテスト運用として従業員に実際に操作してもらっています。五十嵐氏は、「思っていたよりも抵抗なく操作できていますが、使い勝手の悪い部分があるので、従業員の意見を聞きながら少しずつ改善しています。電話やチャットでサポートが受けられるので、分からないことがあればすぐ相談できるのが心強いです」と本格導入に向けて進めています。
売上や勤怠を紙で管理していた時は、営業日報とタイムカードの事務処理に毎日約1時間50分を費やしていました。しかし、アプリを活用すれば1日に約50分、年間で約300時間の作業時間を削減できる見込みです。事務作業の負担を減らし、属人化を改善するのはもちろん、削減できた時間でお客様へのサービス向上等につなげたいと意気込みます。
また、導入済みのPOSレジには分析機能がありますが、今までは勘と経験が頼りで活用できていなかったため、ChatGPTをBI(データから必要な情報を分析する)ツールとして使い、アプリからのデータとあわせて経営判断に取り入れていくことにしました。
自作アプリの成功体験が次のDX推進の意欲に

同社は、従業員の育成にはこれまで紙の教育マニュアルを用いてきましたが、どこまで学んだかを把握しにくく、教育が十分に行き届いていないと感じていました。そこで、マニュアルを動画や文章にして、学習後にチェックを入れる機能を実装した社内教育アプリの作成を目指しています。さらに、お客様情報から隠れたニーズを分析し、商品開発やサービスに反映させるために、ポイントカードを紙からアプリへ移行することを目指して、五目亭公式アプリの作成にも着手しています。
学習プログラムを受講して、業務で使えるアプリを自作できた経験が自信となり、五目亭としてデジタル化に意欲的に取り組めるようになりました。五十嵐氏は、「アプリを自作できれば、課題を低コストで早く解決できます。今回のプログラムで学んだことを次のDXに生かしていきたい」と語り、人間力を生かした接客やチームワークとデジタル化のバランスをとりながら、体験価値の高いお店作りを目指していきます。
専門家(ITコーディネータ)から一言
五十嵐氏は、「ふくいDX経営塾」で自社の変革に向けて積極的に取り組まれ、先ずはやってみようという考え方でチャレンジされています。これは、DX活動の基本となるトライアンドエラーを短期間で繰り返すことと同意であり、今後のデジタル基盤の活用機会の拡大やサービスの充実に繋がると思います。
今後は、現代社会において個人情報の取扱いが厳しくなっていますので、仕組みを考える際にはセキュリティ対策も当初から考慮されると良いと考えます。
取り組みにかかったコスト
コスト | 5000円/月(アプリのシステム「Adalo」使用料) |
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相談先
相談先・活用施策 | (公財)ふくい産業支援センター、福井県(CO-FUKUIプロジェクト) |
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お話を伺った方(役職・氏名)
お話を伺った方(役職・氏名) | 取締役 五十嵐 淳 氏
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会社概要

事業者名 | 株式会社 五目亭 |
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代表者 | 五十嵐 忠和 |
所在地(住所) | 福井県福井市新保北1-409 |
従業員数 | 50名(パート・アルバイト含む) |
事業内容 | ラーメン店・蕎麦店の運営 |
福井市と坂井市で、ラーメン店「旬菜麺茶屋 五目亭」を3店舗、蕎麦店「そば茶屋 甚右衛門」を2店舗運営しています。福井の食材をメインに使用した体に優しいラーメンが自慢で、子どもから大人まで幅広い層に親しまれています。