予約・顧客管理システムの導入で顧客対応向上と新規案件受注に

ポイント

  • 1ベンダーと協議しながらのシステム導入で希望どおりの機能を実現

  • 2顧客との接点をハガキからSMSにすることで返信率や成約率が向上

  • 3システムによる効率化が結果的に新規案件獲得につながる

紙での顧客・案件管理によって、ミスが発生し商機も逃す

 同社は、タイヤの販売・点検・交換・保管を主軸とし、個人・法人・カーディーラー向けにサービスを提供しています。タイヤ交換と保管のサービスを、10年前にホームページで打ち出し、利用者は年々増加していました。しかし、顧客情報(車番・車種・使用タイヤなど)や予約管理などを、全て紙で運用していたため、担当者しか状況を把握できない状況が続いていました。その結果、社内での情報共有が不十分となり、連絡不足による人為的ミスが目立つようになりました。

 書面管理の限界を感じた若杉氏は、「社員のストレスや負担を軽減し、商機を逃さずお客様に最適な商品を提案し、売上を伸ばしたい」と考え、DX実践に踏み切りました。市販の予約システムでは必要な機能のカスタマイズが難しく、かえって非効率になることを懸念し、対話を重視する地元ベンダーにシステム構築を依頼。若杉氏は、「最初から多機能にせず、予約管理と顧客情報の共有に特化し、一覧性を優先しました」と語ります。

社員参画のシステム導入で現場が本当に使いやすいシステムを実現

 システム化の取組みには社員も積極的に関わり、システムに求めることをベンダーと週に1~2回話し合いました。画面でシステムの機能を確認しながら議論を重ね、より実用的な仕組みを構築しました。主には、
①タイヤ交換の予約時に顧客を検索し、作業予約を簡単に行える機能
②保管タイヤの場所や本数をチェックできる機能
③当日の車両受入れや出庫状況を把握できる機能
④社員全員が予約状況をリアルタイムで確認できる機能
などをシステムに実装しました。

 さらに、社員の意見を取り入れ、顧客のタイヤ状態を事前に入力し、予約時に買い替えが提案できるように見積りを伝えること、作業日時やお知らせをSMS(ショートメッセージ)で送信し、顧客とのやり取りをスムーズにする機能も持たせました。これにより、車両と顧客情報の一元管理が可能となり、大幅な作業効率化につながりました。

システムによる全体的な業務効率化が新規顧客獲得に

 従来、1件につき約4分かかっていた予約受付が、システム導入により約30秒で完了。1シーズンに約66時間費やしていた業務を、わずか約8時間に短縮できました。さらに、明日作業予定の顧客の一覧とタイヤの保管場所が表示できるため、前日からタイヤの準備もできるようになりました。この結果、社員に新規案件を受け付ける余裕が生まれ、新たに約30台の車両を抱える法人との契約を獲得できました。また、これまでハガキで送付していたタイヤ買い替えの案内をSMSに切り替えたところ、返信率が向上しタイヤ購入率もほぼ100%に達しました。

 若杉氏は、「社員がデータをもとに在庫確保を進言するなど、営業や販促のアイデアを積極的に出してくれるようになりました」と手応えを感じています。繁忙期のシステム導入は避け、10月からスタッフ全員が入力を行う試験運用を開始。不具合をベンダーにフィードバックしながら、スムーズに導入を進めたことも成功の要因となりました。業務に追われるのではなく、次の準備を行う時間的な余裕が生まれたことで、社員の働き方にも良い影響が広がったと語ります。

システムによる顧客対応の向上でディーラーとの連携強化

 パソコン操作に慣れている社員が多く、今のところシステムの構築や導入において大きな混乱はありません。会社全体が顧客対応改善に一丸となって取り組むことで、成果が上がっています。実際にシステムを運用したところ、法人顧客の作業後に請求漏れがないように、請求や売上に関するチェック機能が必要だと分かり、帳簿との連携をシステムに追加することが今後の改善課題となりました。

 継続的に売上を伸ばすために、若杉氏は「今後はディーラーの販売支援に力を入れたい。ディーラーがタイヤ交換と保管のサービスを見込み客に伝え、契約に結びつける手段として活用してほしい」と話します。この取組みによって、ディーラーは車の販売が進み、同社はタイヤ販売と継続的な利用が見込め、お客様はタイヤ脱着の手間が省けるという三者にとってのメリットが実現します。さらに、本予約管理システムをトラック向けに応用することで、法人顧客を増やすビジョンも見据えています。

専門家(ITコーディネータ)から一言

 タイヤ業界の流通改善によって新品タイヤ用の在庫倉庫が空いたことから開始したタイヤ預かりサービスですが、顧客が順調に増えてきたことで手作業による事務作業に限界が生じ、倉庫のキャパはあるのに新規顧客を受け入れられない状況に危機感を感じたことからデジタル化に取り組んだ事例です。

 独自のソフトを開発する際に、社員を巻き込んだことやITベンダーと良好な関係を築いたことから、現場の知恵を盛り込んだ「痒い所に手が届く」ソフトを開発した好事例です。

取り組みにかかったコスト

コスト

非公開

相談先

相談先・活用施策

ふくい産業支援センター(ふくいDX加速化補助金)

お話を伺った方(役職・氏名)

お話を伺った方(役職・氏名)

代表取締役  若杉 

 

会社概要

事業者名

株式会社山本タイヤ商会

代表者

若杉 

所在地(住所)

福井市勝見3丁目21-3

従業員数

5名

事業内容

タイヤの販売、点検・交換、保管

会社紹介・取扱品目・受賞歴など:
 タイヤの販売・点検・交換・保管などを一貫して対応することが可能です。特に、タイヤの交換+点検+保管がセットになった、「タイヤ管理安心パック」は多くのお客様に好評をいただいております。また、自家用車以外に業務用車両(社用車・大型トラック・バスなど)のタイヤに関することも承っております。

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