クラウドサービスを利用した、即時火災通報システムの実現

株式会社創電は勤務先や遠隔地など離れた場所で発生した火災をスマートフォン等に即時に通知できるIoT火災通知システム「火守(ほもり)くん」を開発した。火災が発生すると既設の火災受信機や住宅用火災警報器の火災信号をクラウドに転送し、火災の発生や現場の情報等を電話着信、音声とともにSMS(ショートメール)及びLINE等の文字メッセージとして即時にスマートフォン等に通知する。新規や既設の火災警報器に接続すればインターネット環境がなくても設置できる簡便さが特徴で、県内外で普及が進んでいる。

ポイント

  • 1ネット環境がなくても、既存警報器の信号をクラウドへ送信可能。

  • 2インターネット上のクラウドサービスを活用し、複数の手段で、多様な情報を通知。

  • 3導入・維持の簡易さと、火災情報伝達の確実性を両立。

火災発生の情報を、スマホなどに即時、確実に通知。

株式会社創電は、消防設備の保守・点検を主業務とする一方で、火災発生時の被害軽減に向け、早期通報、初期消火のためのツール開発にも取り組んでいる。2016年に開発し、特許を取得した「セーブライフ・ファイヤシステム」は、病院や高層ビルなど大規模施設で、火災発生を通報するとともに、スマートフォンなどに出火場所や消火設備設置場所、避難経路などを表示できる画期的なシステム。

しかし同システムは高機能な反面、費用面などで導入のハードルが高い。そこで、小規模施設でも利用しやすいよう、簡易で低コストの通報システムの開発に着手した。開発に当たって最も重視したのは、必要な人たちに正確な情報で火災発生を知らせることができるとともに、即時かつ確実に送達されること。そこで通知に確実に気づき、すぐに行動に移しやすい音声通話やSMSを用いた情報送信を主とするシステムを構築した。

ネットのない場所からも、クラウド経由で火災通報。

見本_創電パンフ_火守

「火守くん」は、施設に設置する「火守くん」の本体である無線通信端末機と、クラウドサービスを経由して端末機から発信された火災を知らせる信号を処理してスマホなどに送信する通知システムで構成する。

「火守くん」本体は、ビルなどに設置されるP型火災受信器や住宅用火災警報器に接続して設置する。警報器などの改造は不要で、火災を感知すると発せられる移報信号の端子を、本体の端子と有線で接続し、電源を取るだけで取り付けが完了する。本体は受け取った火災発生の信号を電話回線を通じてクラウド上のサービスに送信するため、Wi-Fiなどのインターネット回線は必要とせず、電源さえあれば火災警報システムを確立できる。

本体には通信モジュールを搭載可能な小型マイコンボード「Ichigojam」互換機ののIoTデバイス「IchigoSoda」が内蔵され、火災発生の信号を受けると、さくらインターネットのIoTプラットフォーム「sakura.io」に送信。そこからさらに複数のクラウド上のコミュニケーションサービスを経由することにより本体設置場所の名称など「火災に関する必要な情報」を集約して、事前に登録した電話番号に通報する。

火災発生の通報は携帯電話の回線を経由した音声通話ともに、SMSやLINEの文字メッセージでも通知され、火災発生場所のGoogleマップの位置情報や、避難経路や消火器の配置図など、初期消火や避難に必要な情報も通知できる。通知先は複数設定でき、施設の所有者や遠方の家族だけでなく、近所の人や地元消防団などにも情報を提供して、迅速な避難・救助活動につなげることも期待できる。

初期導入費用、毎月の運用コストも非常に低いことも特徴で、火災受信器が設置されている建物なら、本体価格5万円の購入で導入できる。毎月の維持管理費が毎月550円なのも、他のクラウドサービスと比べて格安だ。

地元IT企業の協力を得ながら、システムのほとんどを自社で製作。

アイデアの発案からシステムの構築、「火守くん」本体の製造まで、地元IT企業の協力を得ながら、刀根代表自身が一貫して行った。IoT化の実現に向け、ふくい産業支援センターが運営する「福井県よろず支援拠点」に相談。紹介された鯖江市のIT企業「jig.JP」の福野泰介会長や、同市のITものづくり道場「Hana道場」との交流を通して「IchigoSoda」を活用したシステムの原型を作り上げた。またメインのプログラムの作成や修正については福野会長から逐次アドバイスを受け、火災報知器の移報信号を送信するプログラムを作成した。

こうして開発した「火守くん」は、翌18年11月に発売するとともに、同年、特許出願もしている。販売面では大手消火器メーカーと代理店契約を結ぶともに、自社のネットショップも展開。既に県内外の民泊施設や古紙回収店舗などで利用が進んでいる。

今後の展望

昨年3月に東京都に答申された「スマートシティにおける超高齢社会の防災安全対策の在り方」では、火災を周囲へ早期に周知できる「新しい技術を活用した未来の住宅防火安全対策」の実現性が高い具体例として「火守くん」が取り上げられた。ITのまちづくりを進める鯖江市でも、IoT普及による防災面の課題解決事例として提案されるなど、小規模施設での火災被害軽減という開発時の目的に加え、新技術によるデジタル化で安全な都市機能を強化していくための一助としても県内外で注目されている。

代表取締役 刀根嘉広さん

取り組みにかかったコスト

コスト 非公開

相談先・業務委託先

相談先 福井県よろず支援拠点、Hana道場、jig.JP

会社概要

事業所名

株式会社 創電

代表者

代表取締役 刀根嘉広

所在地

敦賀市若葉町3-1711

従業員数

4人

業種

消防設備点検、防災管理業務、電気工事業など

取扱品目

消防設備施工・保守点検業務、省エネ設備、防災・防犯設備など

嶺南の公共施設や工場などで、広く消防設備工事、点検、修繕に携わる。2016年には大規模施設向けの火災通知システムの特許を取得するなど、防火や火災報知にも注力する。

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