SQLサーバーシステムで糸加工から織物生産まで管理

ポイント

  • 1緻密な準備と計画により、自社に必要なシステムを最小のコストで効果的に導入

  • 2外出先でも迅速な対応を実現するマルチアクセス環境を構築

  • 3生み出した時間を商品の企画開発や発信に活用し、販路拡大を目指す

外出先からデータにアクセスできるシステムに仕様を拡張

 同社は、婦人服用テキスタイルの生産や自社オリジナルブランド商品の生産・販売を行っています。以前は、受注から納品に関する事務作業が全て紙ベースで行われており、顧客からの問い合わせ対応に時間がかかることや事務作業の負担が大きいことが課題となっていました。そこで、これらの解決を目指し、受注から仕入、生産、売上、請求にかかる管理を行うシステムを2017年に構築。請求書などの書類作成の業務時間が大幅に削減され、ペーパーレス化も進みました。しかし、「スタンドアローン型のシステムを構築しましたが、外出先でデータを確認できない不便さを感じる場面が増え、マルチアクセスに対応した仕様を考えるようになりました」と振り返る笠川氏。ふくいDX加速化補助金が利用できることを知り、システムのアップデートに取り組みました。

また、同社はオリジナルブランド商品を勝山市内の直営店「ニンバス」とECサイトで販売する事業も展開しています。実店舗とECサイトで在庫などのデータを連携させるため、POSレジを利用したシステム構築も同時に行いました。

“やりたいこと”から逆算し自社に合ったシステムを構築

 本社のシステムを構築するときは、「業務の洗い出しを行い、改めて業務を理解することやITベンダーに自社の業務を理解してもらうことが大変だった。」と笠川氏は振り返ります。ただ、こうした緻密な準備とコミュニケーションを重ねた結果、糸の単位(kg)と織物の単位(反)の変換を紐づけするなど、業界特有の習慣や同社の業務に基づいたシステム構築ができました。

 また、システム構築時の準備とノウハウが生かされた結果、システムの不安定さをなくすため、SQLサーバーシステムへの移行やデータのクラウド保存等の検討事項はあったものの、比較的スムーズに導入を進められたとのことです。

 同社のシステムは、生産履歴をすべて追える仕組みではなく、糸の受け入れと反物の出荷だけを押さえたミニマムな設計も特徴です。「自社の事業のサイズに合わせたシステムであり、それを仕様拡張したこと、繊維業のシステム構築の実績がある地元のフリーランスのエンジニアに依頼したことで、コストを抑えることができました」。

 また、新規事業の運用にあたっては、手作業による在庫管理や入力ミスによって、顧客対応に支障をきたさないようにする必要がありました。そこで、POSレジ「スマレジ」とECサイト「Shopify」を導入し、データを一元管理できるように構築しました。

業務に費やす時間が大幅に削減し、営業活動の時間が増加

 「システムを移行して約2年が経ちますが、マルチアクセス化されて場所と時間の問題が大きく改善しました」と語る笠川氏。紙ベースの時代は取引先からの問い合わせの返答に半日~1日を費やしていましたが、現在はその場でデータベースを確認して回答。打ち合わせや受注計画がスムーズに進むようになりました。製造現場でもシステムが使えることで事務所に戻って確認する手間がなくなり、棚卸にかかる時間が月に10時間以上削減できています。システムトラブルの際は遠隔操作で復旧ができ、トラブル時の業務にかかる時間のロスも3か月で30分以内になりました。

 システム移行後は複数人の同時アクセスが可能になり、アクセス制限をかけることで笠川氏が担当する仕事と社員に任せる仕事の区分が明確になり、セキュリティも強化。笠川氏は取引先に出向いて営業や打ち合わせをする時間が取れるようになり、以前は半年に1回ほどだった出張が月1回以上に増えたそうです。

次の展開のために、営業や企画開発に力を注ぐ

「本社のシステムは最終的にWebベースで完結できるのが一番いいとは思いますが、サーバーにしているノートパソコンを私が持ち歩いていれば事足りるので、現状では今の体制で十分」と語る笠川氏。IoTやAI技術を活用した効率化、省人化にも関心はありますが、将来的な課題と捉え、これらの取組みはアップデートが必要な時期を見極めつつ、検討を行う方針です。

 また、直営店のECショップは、システム導入によって、在庫データがECサイトにも即座に反映されるようになったため、データの手入力や在庫切れの対応がなくなり、SNSでの認知活動や商品企画に積極的に取り組めています。

本社、直営店ともに「管理システムの導入によって生まれた時間を、自分たちにしか作れないものを企画開発し、発信していくことに注力したい」と語る笠川氏。新しいビジネスチャンスの創出を目指していきます。

専門家(ITコーディネータ)から一言

本事業におけるポイントは、システム導入による業務効率化だけでなく、笠川社長ご自身の働き方の変化から社員への意識変化へと影響を波及させながらDXを推進している点です。DXは単なるITツールの導入で終わらず、将来のあるべき姿と現状とを意識した継続的な取り組みが不可欠です。一度の取り組みで完結させようとするのではなく、社内の定着度を見ながら着実に取り組みを進めている本事例は、多くの会社にとってDX推進のヒントとなるのではないでしょうか。

取り組みにかかったコスト

コスト

740,324円(うち補助金493,000円)

相談先

相談先・活用施策

ふくい産業支援センター(ふくいDX加速化補助金)

お話を伺った方(役職・氏名)

お話を伺った方(役職・氏名)

代表取締役社長 笠川章弘氏

 

 

会社概要

事業者名

株式会社カサ川

代表者

笠川章弘

所在地(住所)

勝山市北郷町森川36-1

従業員数

24

事業内容

ポリエステルや紙糸を主体とした撚糸織物の開発、生産、製造販売

会社紹介・取扱品目・受賞歴など:
高級婦人服向けのテキスタイルを中心に、自社工場で撚糸、整経、織布まで一貫生産。自社オリジナルの衣料品・服飾雑貨品の企画開発も手がけ、カフェ併設の直営店で販売を行っています。

その他の事例集

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