ポイント
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1自社システム開発により、ペーパーレス化と進捗の見える化、業務効率化を実現
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2できることから少しずつ導入するスモールステップでDXをスムーズに推進
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3社内説明会とテスト導入を行い、新システムへの慣らし期間を設ける
ペーパーレス化と業務効率化を目指しDXを推進
テラオライテックでは2018年から業務のDXに取り組み、2024年末に独自の承認機能を組み込んだ原価管理システムを導入しました。
以前は紙ベースや伝言メモで記録を残し、工事の施工写真などのデータは社内サーバーに蓄積していた同社。情報や書類の流れが分かりづらく、経理の入出金処理とのタイムラグも発生していたため、「情報を一元化して、分かりやすくしてほしい」という声が若手社員から上がりました。さらに、サーバーの容量が不足して業務が止まるトラブルを経験したことから、社内の有志で業務改善委員会を立ち上げ、本格的にDXに取り組みました。
「いきなり大きな投資は難しいので、まずは社内に浸透できそうなツールを探し、無料版で試すことから始めました」と話すDX推進担当の髙橋氏。最初に導入したオンラインストレージサービス「Dropbox」によって業務の効率化が図られ、サーバーにかかるコストも削減できたことから、次々にデジタルツールを活用。2022年からは根本的な課題解決を目指し、原価管理システムの開発プロジェクトに着手しました。
複雑な承認フローを実装できるかが開発の鍵に
同社が構想したのは、営業、工事部門、経理の原価管理データを一元化し、見積もりから実行予算の登録、入出金処理までの流れを明確にするシステム。役職や部門ごとに操作できる部分を区別しなければならず、ベンダーとシステム構築が可能かどうかの検討に1年近くを要しました。
「実行予算書は営業が作成し、承認後は工事監督者に回されるため、書類作成者とは別の担当に承認を返すという複雑なフロー。実行予算書の承認がなければ現場も経理も仕事を進められないので、承認システムが実装できるかどうかが最大の難関でした」と振り返る髙橋氏。申請は役職者個人ではなく管理職アカウントを持つ社員に通知し、コミュニケーションツールで誰に申請したのかを連絡する方法を採るなど、現場もシステムも煩雑にならないバランスを見極めながら開発。PDFだと修正が入った場合に作成し直す手間がかかるため、修正が可能な「草稿」フォームを用意し、承認を受けた実行予算書が次の処理に進める設計としました。
DXをきっかけに業務改善が加速。残業が減り、年間休日が増加
原価管理システムの稼働により、一気にペーパーレス化が進んだ同社。導入にあたっては、見積書の登録フォームを先行してテスト運用を行い、事前に社内説明会を開いて使い方を説明し、電子申請に慣れるプレ期間を設けました。そのため、本格的な導入がスムーズに運び、課題だった業務の見える化も飛躍的に改善されました。
「見積書の作成者や受注の成否、工事の進捗など、一連の流れがパソコンを開けばすぐに分かるようになり、状況の把握や業務の管理がしやすくなりました。書類探しや担当者に確認する手間は、一見小さくても積み重なると大きな時間と労力のロスになります。それがなくなり、さらに社員がシステムをうまく活用したことで残業時間が大幅に減りました」と話す髙橋氏。小さな取り組みからデジタル技術の活用に慣れていったことで、社員のデジタル技術に対するリテラシーやデジタル技術を受け入れる社内風土が形成され、積極的な業務改善につながりました。社員の努力との相乗効果によって効率化のスピードが加速した結果、年間106日だった休日が今年度から120日に増えたそうです。
グループ全体の組織力強化にもデジタル技術を活用
「理想を求めて条件を増やし過ぎると、システムが複雑になりすぎてうまく稼働しないリスクが高まります。スクラッチ開発は『どこまでこだわるか』の線引きも重要」と話す髙橋氏。工数やコスト、導入後の保守など、総合的な視点から納得できるラインをベンダーと見極めるためにも、事前にシステムに反映させる業務の内容を棚卸し、全体の流れや関係性をしっかり把握することが大切だと振り返りました。
同社は国内外に事業のフィールドを広げており、ホールディングス化と新たな子会社の加入により、組織が急激に拡大しています。その中で、グループ全体の理念の共有や社員教育の要望が増えたことから、髙橋氏はノーコードツールを使って動画学習サイトやコミュニケーションの場となるグループウェアの制作に挑戦。DXを担当した経験が、新しい分野の学びやスキルアップに生かされています。髙橋氏は「人事評価システムや日報入力システムなど、他にも取り組みたい課題が残っている」とし、デジタル人材の育成や雇用を見据えながら、今後もDXを進めていきたいと意気込みます。
専門家(ITコーディネータ)から一言
やり慣れた方法を変えることは、それがいかに非効率なものであっても、大きな困難を伴います。それでも本事業が様々な変化を実現できた大きなポイントは「ITを活用することの効果を身近なところから実感する」「実現したい姿を具体的にイメージする」「作り手(IT企業)と互いに当事者意識を持つ」の3点です。DXは一度に目的を達成することが難しく、一つ一つ、継続的に問題解決を進めていくプロジェクトです。長期にわたってプロジェクトを完遂させた本事業の取り組みはDX推進を考える上で多くの示唆を与えてくれます。
取り組みにかかったコスト
| コスト | 非公開 |
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相談先
| 相談先・活用施策 | 非公開 |
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お話を伺った方(役職・氏名)
| お話を伺った方(役職・氏名) | 総務・経理部 髙橋雄也氏
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会社概要
| 事業者名 | テラオライテック株式会社 |
|---|---|
| 代表者 | 白崎龍也 |
| 所在地(住所) | 越前市本保町8-5-1 |
| 従業員数 | 40名 |
| 事業内容 | 給排水衛生設備工事、空調換気設備工事、電気設備工事など |
設備工事と電気工事、住宅リフォームを柱に、地域のインフラを支える技術者集団。2020年にホールディングス化し、アパレルや福祉、教育、海外事業など、複合的にビジネスを展開する企業として県外にもフィールドを広げている。
