ポイント
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1受注データをもとに食材を発注し、食材のロスをほぼゼロに
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2ドライバーの配送状況を本部で追跡し、遅延時はメールで自動通知
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3メニュー情報をデータベースに蓄積し、病院との提携を視野に
効率的な運営を目指し、サービスの要となる業務にデジタル技術を導入
日本の平均的な家庭が1カ月でこなす家事は、170~180項目あると言われています。特に日々の料理の大変さに悩む声が多いことから、代表の松井淳氏は、家庭の食卓をサポートすることを目指し、2025年2月に夕食宅配サービス「ウエルネス・ミール」をスタートさせました。
このサービスは管理栄養士が作成した料理リストからメニューを選ぶと、その日の午前中に調理された手作りおかずが真空パックで届くというシステムです。自宅への宅配だけでなく、勤務先への配達も可能です。調理済みのおかずが冷蔵で届くので、電子レンジで温めたらすぐに夕食が完成します。
「このオペレーションでサービスを運営するにはデジタル技術が欠かせない」と考えた松井氏は、ふくい産業支援センターのDX専門家派遣制度を利用し、Web受注システムの開発に着手。事業の拡大や全国へのフランチャイズ展開を見据え、受注データを蓄積するデータベースの構築や顧客管理、デジタル決済による売上管理など、効率的な運営体制を整えることを目指しました。
選びやすく、支払いやすく、配達に不安のない、利用しやすいサービスに
システム開発では、専門家のサポートを受けながらベンダーと話し合いを重ね、業務フローの可視化を実施。その結果、受注サイト・受注管理システム・配達連絡を最優先でデジタル化し、材料の発注や調理、レシピの管理は、段階的に取り組む方針としました。
「ウエルネス・ミール」の料金体系は調理料金と食材費に分かれており、調理料金は利用回数に応じた月額料金を設定し、選んだメニューに応じて別途食材費がプラスされる仕組みです。支払いはデジタル決済であらかじめポイントを購入し、月末に当月の利用分をポイントから差し引く方式としました。顧客はサイト上で予算立てや、過去の注文データを参考に献立選びができます。
配達は、ドライバーが担当エリアの配達データをQRコードで読み込み、ドライバーのIDと配達予定を紐づけます。配達状況は本部で追跡することができ、予定時間より遅れている場合は、顧客に到着予定時刻を知らせるメールを自動送信されるよう設定しました。
遅配に対するクレーム発生がなく、解約もほぼゼロ
「受注システムのデータをもとに、1週間単位で仕入れや作業の見通しを立てられるので作業効率がよく、食材のロスも出ないというメリットを実感しています」と語る松井氏。遅延時のメール自動通知機能を追加したことで、遅配に対するクレームもないといいます。
同社ではお試しで2日間無料サービスを行っており、WebサイトやSNS広告に加え、対面営業や試食会でも新規開拓を行っています。「夕食にかかる家事の時間がなくなるため、一度使ってみるとどの会員様も口を揃えて『すごく楽』と喜んでくださいます。食材費も、履歴から1ヵ月の費用を算出すると、自分で買い物をするより安いという方が多く、解約される方はほとんどいませんね」と、松井氏は反応の良さに笑みを見せます。
2025年2月のスタートから約9ヵ月で法人70社と提携し、約200人の個人会員を獲得。解約した事例は、県外への転勤で継続できなかったケースを除けばほぼゼロといい、サービスの満足度の高さがうかがえます。
医療機関と連携し、食を通じた健康づくりのサポートを視野に
同社では、食材の発注や調理工程の指示は紙ベースで行い、メニューの栄養素などの情報はデータベースに手入力で記録しています。特に栄養素データの入力は手間がかかるため、現在、この作業と情報管理のデジタル化を進めています。
松井氏は、レシピが蓄積されることで提供するメニューの幅を広げるだけでなく、医療機関との連携も視野に入ると語ります。「例えば、骨粗しょう症に良い食材はたくさんありますが、美味しく食事で摂取するレシピを毎日考えるのは難しいですよね。そこで、病院と連携して健康的な食事の認証マーク付きメニューやレシピを提供できれば、より深く『食』をサポートできると考えています」。実現すれば、管理栄養士の資格取得に必要な実務経験の対象施設になり、スタッフのスキルアップ支援にもつながるといいます。
今後は、紙ベースの作業もデジタル化し、短時間で効率よく調理できる体制づくりを進めていく方針。将来的には、「調理工程から配達までの作業予定時間もAIで計算して表示できるレベルにまで引き上げられたら」と展望しています。
専門家(ITコーディネータ)から一言
「働く女性を楽にしたい」を理念に新規事業を始めるにあたり、①注文時の顧客の利便性を高める、②配送の遅配誤配を防ぐことでサービスの質を高める、③食材のロス削減や徹底的な作業効率化でサービス価格を安価にすることを実現するためにデジタル技術を活用しています。
経済産業省が提唱しているDXによる取組みテーマの1つである「新規事業開発:データやデジタル技術を活用した新規製品・サービスの市場への提供」に該当する好事例です。
取り組みにかかったコスト
| コスト | 約3000万円 |
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相談先
| 相談先・活用施策 | (公財)ふくい産業支援センターDX専門家派遣事業、ふくいDX加速化補助金 |
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お話を伺った方(役職・氏名)
| お話を伺った方(役職・氏名) | 代表取締役 松井淳氏
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会社概要
| 事業者名 | 株式会社エム・アンド・エム |
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| 代表者 | 松井淳 |
| 所在地(住所) | 福井市春日2-2-4 |
| 従業員数 | 7名 |
| 事業内容 | 惣菜宅配サービス |
前職で市場調査に従事してきた松井氏が、日々の食事づくりに対する悩みに着目。共働き家庭を中心に食事の準備をサポートするサービスとして、管理栄養士の調理済み料理の宅配事業を立ち上げました。
