ポイント
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1熟練工頼み、高コストのソフト外注化からの脱却
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2作業に最適なデバイスを選び改良する現場主導のデジタル変革
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3新人の習得期間を2週間から半日へ短縮
目視と手入力の製造管理から脱し、ミスを減らす取り組みへ
同社は、アルミニウム合金の押出材料を使ったビル・住宅・エクステリア向け建材商品の開発・生産・販売の事業を展開しています。 同社の製品は、設置場所の仕様に合わせたオーダーメイドも多く、かつ長らく熟練工の目視や勘に頼るものづくりが続いてきました。製造現場では、紙の指示書が主流でミスも目立つ状態でした。改善のため外注のパッケージソフトを導入していましたが、製品ラインナップが増えるたびに追加費用と時間がかかるため、投資対効果が見合わないものになっていました。「それなら時間をかけてでも自社に合わせたシステムを作ろう」と決意し、システム構築のため数名の社内チームを立ち上げました。掲げた目標は「誰でもできる、高品質なものづくり」。手入力によるアナログな操作から脱却し、誰もが迷わず正確に作業できる環境を整えることを目指しました。
現場の課題を洗い出し検証を重ね、作業初日からでもできる操作に
最初は数個のデバイスによるテストを繰り返し、現場の各工程に最適なハードウェア(スマートフォン、タブレット、ハンディターミナル、バーコードスキャナーなど)を選定し、それに連動するソフトを自社開発していきました。
特に重視したのは「間違いを事前に防ぐ仕組み」です。例えばピッキング作業では、品目をスキャンした際、ハンディターミナルが赤い文字で視覚に訴えるだけでなく、振動(触覚)やブザー音(聴覚)で注意喚起をします。作業初日からでも作業ができ、ペーパーレスにもつながりました。熟練の技が必要だったプレス工程にはモニターによる画面表示を導入しました。仕様によって異なる加工順をモニターに表示し、ランプの点灯やメロディーで部材の反転や終了のサインを出します。また台車の置き場不足や人による運搬のタイムロスを解消するため、自動搬送装置を導入し、タブレット一台で指示・操作ができる体制を整えました。
「誰もが同じ品質でつくる」を当たり前に。確実な出荷を支える安心感
これらのデジタル化により、現場は劇的な変化を遂げました。まず、紙中心だった作業をバーコードやタブレットへ置き換えたことで、ペーパーレス化が進み、紙の使用量は70%も削減されました。全体の生産性も25%アップという高い数字を出しています。
「プレス機順番制御システム」は、新人が作業を覚えるのに2週間かけていた時間が、わずか半日で習得可能になりました。教育コストの低減はもちろん「誰もが同じ高い品質で製造できる」という目標が現実のものとなりました。
当初は「面倒だ」と漏らしていた現場スタッフからも、数字で成果が明確に見えるようになると「ここを改善してほしい」という積極的な声が聞かれました。現在は「確実に正しい製品を出荷できる」という安心感が現場に定着し、作業者の心理的な負担や不安が解消されています。
自社システムを外販事業へ。新しいビジネスの兆しがある
現場の作業者は必ずしもシステム的な要件定義ができるわけではありません。そのため、開発側が一度現場でシステムのテストを実施し、実際に使いながら微調整を繰り返すという改善の連続でした。また、古い切断機などの旧式設備と最新システムを連携させることにも苦心しましたが、メーカーへのヒアリングを重ねて成功例を一つずつ作り、その応用でシステムを横展開していきました。
今後の課題としては、「技能伝承」です。現場のベテランが行っている作業方法に加えて、生産設備、システム設計等、マニュアル化が難しかった内容に関してもAI/DXの観点から解決出来ないか?とチャレンジしていく予定です。同社は「DXは単に儲かる・儲からないの視点だけでは進まない。短期的な費用対効果ではなく、将来にわたる品質維持と企業の存続のために必要な投資である」と考えています。この製造システムを見学した顧客からの「自社にも導入したい」という声を受け、将来的にシステムを外販し、新たな事業の柱として育てていくことも視野に入れています。
専門家(ITコーディネータ)から一言
顧客からの重大クレームを契機に、受注から出荷まで主要工程のデジタル化を段階的に内製で進めている点が秀逸である。外注依存から脱却し、現場との密接な対話により「完成度より運用優先」で改善を重ねる手法は現実的で再現性が高く、社内試算として紙の使用70%削減、クレーム60%削減、生産性20%向上という具体的成果を達成している。蓄積したノウハウを外販事業に展開する計画は、製造業DXにおける一つの到達点と言える。
取り組みにかかったコスト
| コスト | 自社投資 |
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相談先
| 相談先・活用施策 | ふくい産業支援センター、福井商工会議所 |
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お話を伺った方(役職・氏名)
| お話を伺った方(役職・氏名) | ものづくり革新部 革新グループ 設備化チーム 恩地秀和氏、革新グループ デジタル推進チームチームリーダー 高間和也氏、革新グループ グループマネージャー 三田村優樹氏
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会社概要
| 事業者名 | 株式会社TOKO |
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| 代表者 | 代表取締役社長 佐々木紘 |
| 所在地(住所) | 鯖江市熊田町1-100 |
| 従業員数 | 196名(2025年9月現在) |
| 事業内容 | イスターカーテン・エクステリア・住宅商品の開発、製造、販売 |
「空間の有効利用」を商品コンセプトに掲げ、店舗や住宅用の「折りたたみ式の扉や窓」、「伸縮門
扉」などの建材を製造する専門メーカー
