ポイント
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1現場管理や労務管理の担当者頼みとなり作業が停滞
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2生成AIとICT建機を武器に作業を効率化
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3課題は増大するメカメンテナンスとソフト利用料
社員の生活を守りつつ、楽な現場を実現させるための戦略
越前海岸沿いに本社を構える総合土木業、株式会社建昇。同社のDX化は、労務環境の改善から始まりました。かつての現場監督は、多忙な施工管理に加え膨大な書類作成を抱え、年間休日はわずか80日台。朝7時から夜遅くまで働くことが当たり前という風潮がありました。現場監督が現場に張り付かなければならない状況や、バラバラのフォーマットによる原価管理、基準があいまいな出面表など、バックオフィスを含めた業務の属人化と非効率なアナログ管理も目立っていました。岩上元紀副社長は「高い給与水準を維持したまま、どうすれば生産性を落とさずに働きやすい環境にできるか」と考え、社員の意識改革を行いながら、効率化を念頭に時代に合わせた働き方や管理の方法を目指しました。そこからICTやデジタル技術の活用を積極的に展開しました。
最新技術とAI活用を浸透させ、デジタルデータを武器に
最初からすべてが順調だったわけではありません。かつて導入した原価管理ソフトは「本社でしか使えない」という制約からだれも使わず、再びエクセル管理に戻した経験があります。そこで入力を習慣づけた後に現場事務所から入力可能なクラウド型の「どっと原価」や「奉行クラウド」を導入し、リアルタイムな資金繰り管理を行えるようにしました。またタイムカードを押すためだけに帰社する無駄を省くため、スマートフォンによる位置情報連動のウェブ打刻を採用。施工面ではドローンによる3次元測量や、GPS搭載のICT建機を導入してデータで一貫管理しています。また、書類作成においては、建設業特化の生成AIツール「光/Hikari」を駆使。自治体ごとの基準書や社内書類の検索、技術文書に活用し、書類の精度の向上と時間の短縮を図っています。他にもクラウド上で工事写真を自動振り分け・管理できるシステムで、数千枚に及ぶ写真整理業務を大幅に効率化。現場の負担を徹底的に軽減できました。
月10時間の残業削減と測量時間6割減。数字で見えた効果
出退勤のウェブ打刻の導入だけで月間で一人当たり約10時間の削減に繋がり、全体として残業時間は約20%減少。スマートフォンやドローンを使用した測量作業により従来の手法と比較して、所要時間を約6割も削減することに成功しました。少ない人数で大規模な現場をこなせるようになり、数字として生産性の向上と利益率の改善が表れています。さらに自社で培った3次元計測やドローン撮影のノウハウを活かし、外部企業からのデータ作成を受託するという新サービスが誕生しました。同社のDXを支えているのは、社内専門のデジタル人材です。社内にデータ解析や3D CAD作成を担う専任者を置くことで、現場とデジタルの橋渡しをスムーズにしています。また、1割を占めるブラジル人社員も、多言語対応のICT建機を使い活躍。現場ではスタッフの前向きな姿勢にあふれています。
過酷な現場環境で使用するデバイスの維持とコストが壁
土木現場の過酷な環境(直射日光や風雨)によるメカトラブルが多く、5~6年で寿命が来るデバイスの維持・更新コストが課題です。導入するツールが増えるにつれ、維持費(サブスク代)が無視できない額になっており、今後は必要なツールの「選択と集中」が求められています。「毎年展示会へ出かけ、新情報、新技術に目を通して取り入れるようにしています。現在はアプリケーションが乱立しているため、これらをシームレスに連携・統合できるとよい」と岩上副社長。技術面ではGPSが届かない山間部やトンネルでは従来の測量技術が必要なため、職人的な技術の継承を両立する難しさも浮き彫りに。またデジタル人材が特定個人に依存している側面があるため、組織としての人材育成も必要です。同社では導入の段階を超え、組織としてどう使いこなし、次世代へ繋ぐかという新たなフェーズにいます。
また、ICT技術およびデジタル技術を活用した施工技術を活かし、測量等の一部施工の受託事業も開始しており、培った技術を生かした新たな事業分野の開拓も行い、更なる自社の発展を図っています。
専門家(ITコーディネータ)から一言
本事例は、工事原価の管理ツールや建設業向けAIツールを業務で活用し、業務改善や利益率の改善を実現している好事例である。ITツールを導入したが現場で使えずExcelに戻した失敗もあり、利用者が利用しやすいツール活用方法を考慮したことが成功のポイントであると考えられる。さらにデジタル測量機器とドローンで測量作業の効率化に取組んでおり、これを活かして他社の測量作業を請負うサービスを始めたと伺う。DX取組みを効率化だけでなく新事業の開拓に繋げている好事例である。
取り組みにかかったコスト
| コスト | 非公開 |
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相談先
| 相談先・活用施策 | ふくい産業支援センター(DX加速化補助金) |
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お話を伺った方(役職・氏名)
| お話を伺った方(役職・氏名) | 取締役副社長 岩上元紀 氏
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会社概要
| 事業者名 | 株式会社 建昇 |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役社長 岩上 博二 |
| 所在地(住所) | 福井市南菅生町29-4 |
| 従業員数 | 44名 |
| 事業内容 | 一般土木工事業、とび・土工・コンクリート工事、管工事、鋼構造物工事など |
道路、トンネル、橋、河川などの土木一式工事、また、道路の舗装工事など生活を支えるインフラ整備を行っている。ICTとデジタル技術を活用する施工技術を生かした取組みで、令和7年度優良工事等事業者表彰の優秀賞を受賞しました。
