ロボット導入効果高める大量生産の部品に着目
省人化を本格検討するきっかけは、ものづくりの国内回帰。同社は約20年前に中国に進出し、生産拠点の軸を移しましたが、中国の人件費高騰などに直面し改めて国内生産に目が向いたそうです。
ロボット導入の検討はそれ以前にもあったものの、プログラム開発を内製化できないことが壁でした。ベンダーに依頼すると、製品の仕様変更によるプログラム変更など即時性が損なわれることになりがちだからです。
解決の糸口になったのが、Uターン就職した生産部の吉田勇己氏の入社でした。前職はSIer(システムインテグレーター)で、工場設備のソフトウェア業務に携わっていた経験を買われて入社した吉田氏。吉田氏が生産部門に加わり、内製化という課題の解決に向け弾みが付きました。
ロボット導入効果は大量生産の場面で如実に表れます。そこで、管理部の吉田仁氏らはワイヤレスシステムの受光器に着目。月産約4,000個という実績から導入効果が見込めると判断し、県の令和2年度『IoT・AI・ロボット等導入促進事業補助金』の交付を受けて取組みを進めました。
年度内の導入が求められるため、稼働までのスケジュールがタイトではありましたが、内製化の効果もあり2021(令和3)年2月に設備が完成。異常などが起きたときは担当部門にメール通知する仕組みで、始業時以外に社員が付くことはほぼありません。
新たなロボット導入でアナログ盤人気に対応
その後ロボットを1台増設し、タクトタイム※は従来の約4分から約2分30秒に短縮。部材の受光器基板もロボットの動きに適した梱包で納入されるように工夫したところ、緩衝材など資材コスト抑制という効果ももたらしました。
これら一連の機器が置かれるのは、以前会議室だったという一室。通路からガラス越しに様子を見ることができ、社員へのアピールの場ともなっています。生産工程の選択肢が増え、設計部門から「この工程はロボットでも対応できるのか」という声も上がるようになってきたそうです。
2022年末には新たに、レコードカートリッジ組立てにもロボットを導入しました。微細なレコード針を差し込んだり、検品したりする工程をロボットに任せ、近年のアナログレコードブームで再び高まるカートリッジ需要に応えていきます。
両氏は取組みを振り返り、「ロボットの有効活用には、ロボットができる動きに応じた製品設計を行うことが重要」と口をそろえます。手作業のように臨機応変な動きが不得手なロボットをどう活用するか、両氏は「設計部門と連携を密にし、ロボット活用をより進めていければ」と話します。
※タクトタイム:一つの製品を製造する時間
会社概要
事業所名 | 株式会社オーディオテクニカフクイ |
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所在地 | 越前市戸谷町87-1 |
代表者 | 松下和雄氏 |
資本金 | 5000万円 |
事業内容 | 業務用音響機器(マイクロホン、ワイヤレスシステム等)製造、民生用音響機器(カートリッジ・交換針等)製造、その他の音響・映像関連アクセサリー等製造 |
従業員数 | 196名 |
TEL | 0778-25-6700 |
HP |