ポイント
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1職人の経験や勘をデジタルで表現し、経験を問わず高品質な製品づくりが可能に
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2歯科技工技術の今後の完全デジタル化を見据えて、早めの設備投資
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3在宅での設計作業が可能になり、社員の働きがいがアップ
CAD/CAMシステム導入による脱属人化

差し歯や入れ歯、歯の被せ物や詰め物など歯科補綴物の制作は、オーダーメイドのため大量生産が難しいという特徴があります。これまでは長年、歯科技工士の経験や感覚に頼っていましたが、近年は業界全体で、CAD/CAMシステムの導入によるデジタル化が進んでいます。
CAD/CAMで制作した成形データに基いて削りだす「CAD/CAM冠」は、歯と同じ白色の素材のため、見た目がよく、銀歯のように金属アレルギーを引き起こす危険性がありません。2022年には、ほとんどの歯において保険適用となり、業界全体のデジタル化が一層進みました。
同社はそれに先がけ2015年に、歯科用のCAD/CAMシステムを導入し、丹南地域でいち早くデジタルでの生産体制を構築しました。作業としては、歯科医院で患者の歯をかたどった模型を、高精度スキャナーで読み取り、CAD/CAMソフトで設計したデジタルデータを制作し、ミリングマシンで削り出し加工を行います。
最終調整は歯科技工士が手作業で行いますが、作業時間が大幅に短縮され、属人的なバラつきがなくなったことで製品もより高品質になりました。導入から6、7年後には売上額は倍になり、導入前には越前市・鯖江市が中心だった取引エリアも、坂井市から南越前町まで広がりました。
業界の流れをいち早く取り入れ、アドバンテージに

株式会社ディプロの歯科技工士は全部で6名。「会社の規模としてはそこまで大きくありませんが、進化し続ける歯科技工のデジタル技術にいち早く対応し、どこにも負けない技術と最先端の設備を揃えています」と語る木股社長。
最近では「チタン冠」の保険適用が拡大したことに合わせて、公的補助金を利用して鋳造機の導入を予定しています。さらに今後は、歯をかたどって作る模型そのものを必要とせず、歯科医院で口腔内スキャナーで撮影されたデータから歯を作る完全デジタル化が主流になると予測されています。
同社では、その保険適用も見据えて、すでに一部で導入しています。模型のスキャンという従来の工程が不要となった反面、模型を使った最終チェックができないという不都合が生じているため、3Dプリンターを導入し確認用の模型を作って対応しています。
在宅勤務の実現で、社員のワークライフバランスを改善

CAD/CAMシステムの導入により、長時間労働になりがちだった従来の働き方が大きく変化し、また在宅での作業も可能になりました。これまでは出社しなければできなかった設計作業を、CADソフトの入ったノートパソコンを持ち帰ることで自宅で行うことができます。
そのおかげで、会社から自宅までの距離が遠いなどの事情を抱えた社員が、家族との時間を増やせるようになりました。また現在、在籍する歯科技工士は男性のみですが、設計作業がより手軽になり多様な働き方を受け入れられるようになったため、結婚・出産などのライフプランを考える女性も働きやすくなりました。
職人気質だった業界の間口が広がったため、人材を募集する上でのアピール力も強化されました。
今後の展望

株式会社ディプロは規模は小さいですが、高いスキルを持った歯科技工士が在籍し、デジタルの最新設備と技術力では他社に負けないと自負しています。新たなデジタル技術の導入は今後も積極的に行い、人員の増加や多店舗展開も視野に入れています。若い歯科技工士にここで働きたいと思ってもらえるような、地域ナンバーワンの技工所を目指します。
取組みにかかったコスト
コスト | 3,000万円 |
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会社概要

社名 | 株式会社ディプロ |
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代表者 | 代表取締役 木股 裕輔 |
所在地 | 福井県越前市国高1-3-3 |
従業員数 | 8名 |
業種 | 歯科技工業 |
取扱品目 | 歯科技工物 |