人員の適正配置で働き方改革が実現
今回導入したシステムは業務管理クラウドサービス「kintone」を利用した生産管理システムで、受注入力を事務所で行った後、工場で生産計画を作成し、生産時には各工程で実績を入力するものです。また、QRコードを利用して在庫を管理することも可能となっています。
製品毎の実績が把握できるようになったことで、生産計画が精緻に立てられるようになり、人員を適正に配置することが可能になりました。
その結果、残業がほとんどなくなり、有給休暇5日取得も問題なくでき、働き方改革が自然と進んでいる状態です。
また、システム導入後に定年で退職された社員が3名いましたが、新たに人員を補充することなくコロナ禍前の生産量を維持できており、業績にも好影響が出ています。
システム導入で社員の意識が変化し品質改善
システム導入の際、工場内の温度や湿度と製品品質に相関関係があるのでないかという仮説のもと、簡易IoTシステム「MESH」を使った温度や湿度測定と品質データの収集を行いました。IoTを設置できない場所では、社員が手作業で温度や湿度を測定しました。約1年測定してデータを分析しましたが、温度や湿度と製品品質に相関関係は見られませんでした。
しかし、この取組みによって社員の品質に対する意識が向上し、品質改善に自主的に取り組むようになり、システム導入前は約6%だった不良率が、現在は約3%と半減しています。
システム導入時に、社員に目的を明確に伝えたことや、システム開発時に生産に従事しているベテラン社員を巻き込んだことなども影響していると思われます。
顧客からの問合せへの回答がスピードアップ
システム導入以前は、顧客から納期などの問い合わせがあると、事務社員が工場内を駆け回って製品在庫や仕掛在庫の状況を調べたうえで回答していました。システム導入後は、事務所でパソコンの画面を見ることで在庫状況が一目で分かるようになり、回答までの対応のスピードアップが図られ顧客満足が向上しています。
また、最近の円安による原料の高騰もあり価格の値上げ交渉をしなければならないことがありましたが、システムの実績データをもとに製品毎の製造原価を正確に出すことができたため、適切な価格設定で交渉することができました。
更に、顧客に迷惑をかけることもなく製品在庫高が以前に比べ減っており、キャッシュフローが良くなっています。
ITコーディネータから一言
システム導入の当初の目的は、①工程進捗状況の見える化による生産性の向上、②QRコードを活用した在庫管理による顧客対応のスピードアップ、③工場内の温湿度データの取得・分析による品質改善でした。
これらの目的が達成されているだけでなく、働き方改革や社員の意識改革、キャッシュフローの改善などの副次的な効果が出ています。
今後は、kintoneのひな型アプリを使って、他の業務についても改善を進めたいと考えているとのことでした。
経営全体に大きな成果が出始めており、システム導入の費用対効果が大きい事例です。
お話をお伺いした方
かかった経費(予算)
コスト | 200万円 |
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会社概要
事業所名 | 山伝製紙株式会社 |
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所在地 | 福井県越前市南小山町13-23 |
代表者 | 山口 和弘 |
従業員数 | 16人 |
業種(中分類) | パルプ・紙・紙加工品製造業 |
事業内容 | 機械抄き和紙 および 機能紙の企画・製造 |