ポイント
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1自社開発のRFID在庫管理システムで業務効率化を推進
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2クラウド型在庫管理システムに発展させ付加価値の高いサービスを提供
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3新システムを病院内の人や物品のトレーサビリティ管理に応用
RFID在庫管理システムを自社開発し課題解決とサービス向上を実現
同社は、リース商品として大量のリネン類やユニフォームなどを取り扱っており、長らく在庫管理の精度が低いという業界共通の課題に悩んでいました。正確な在庫情報が不足しているため商品の状況を把握しきれず、紛失した商品を自社で補填することも頻発していたそうです。
代表取締役の吉田紀章氏は、以前からRFIDタグに注目していましたが、チップの耐久性が低いことや主力商品のシーツ類には不向きな厚みのある形状から導入を見送っていました。しかし、約6年前に対洗性の高い薄型RFIDタグが市場に登場したのを機に、在庫管理システムの開発に取り組むことに。システムはSEの経験を持つ吉田氏がマイクロソフト社のデータベースソフトウェア「Access」を利用して開発。工場からの出荷時、取引先への搬入および回収時、クリーニング仕上げ時の4ポイントで商品に縫い付けたRFIDのデータを読み込むことで、商品のトレーサビリティを明確にする効果的な仕組みを築き上げました。
収集したデータを営業戦略にも反映
膨大な量のリネン類に手作業でRFIDタグを取り付けるのは大変な労力を要しましたが、システム導入後は管理が行き届くようになり、商品の紛失などのトラブルが減少。商品の棚卸作業も簡単になり、業務の効率化が進みました。吉田氏は「どんな商品がよく動いているか、商品がどのくらい長持ちするのか、集められたデータから傾向が分析できるようになり、営業戦略に活かせる数字も出てきています」と笑顔を見せます。ユニフォームに関しては、個人別のクリーニング実績を集計したデータを取引先に毎月送付し、管理に役立ててもらうことでサービスの向上と差別化も図っています。
クラウド型在庫管理システムを開発用途の幅を広げて新規事業に挑戦
さらに同社は、在庫管理システムの機能と6年間の運用ノウハウをもとに、事業再構築補助金を活用してクラウド型の在庫管理システム「iLincs」を開発しました。2023年春からシステムの運用を開始し、順次移行を進めています。
これまでは、所在がわからないユニフォームの状況を教えて欲しいといった問い合わせがあると、同社の社員がデータを調べメールで返答していましたが、クラウド版では取引先の担当者がスマートフォンやパソコンから、直接照会できるようになりました。また、商品に貼り付けたQRコードから取引先の担当者がデータにアクセスできるように。スマートフォンから取引先自身で納品履歴、洗濯回数などの情報を確認できるようになりました。
また、同社が力を入れる医療業界では、新型コロナの流行を受けて病院のゾーニングが重要視されるようになっています。この状況に対応すべく、吉田氏は各ゾーンの入口にRFIDリーダーを設置し、「iLincs」による病院内のすべての人のトレーサビリティ管理を提案。
従来のサービスと併せて提案することで、導入先を広げていく計画です。吉田氏は「リネンサプライも提供できるという強みも活かして、ニーズのある分野にシステムを普及させていきたい」と意気込みます。
今後の展望
もともと自社の業務改善のために開発した在庫管理システムでしたが、同業者や取引先の業務改善にも役立つことから、新しいビジネスとして確立させることを目指しています。現在は「iLincs」のトレーサビリティ管理システムをパッケージ化し、医療機関に特化して全国に展開するプランを進めています。ユニフォームやリネン類だけでなく、人の動きまでRFIDで管理できる病院向けシステムはまだ普及していないので、料金体系を含め、お客様が導入・運用しやすい形で提供できればと考えています。(取材者:代表取締役 吉田紀章氏)
取り組みにかかったコスト
コスト | 非公開 |
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相談先
相談先 | 事業再構築補助金を活用、ふくい産業支援センター(DX専門家派遣業務) |
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会社概要
社名 | フクイリネンサプライ株式会社 |
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代表者 | 吉田紀章 |
所在地 | 福井市三尾野町29-2-15 |
従業員数 | 30名 |
取扱品目 | 寝具・ユニフォームなどのレンタル・リース |