ポイント
-
1厚生労働省の人材開発支援助成金を利用し、システム開発を内製化できる環境に
-
2無償のツールを活用し、低コストで業務のIT化を推進
-
3社内にDX推進グループを創設し、約150本のプログラムを作成
紙とエクセル中心の業務プロセスを自社開発で一元管理システム化
同社では2016年から社内の業務プロセスのデジタル化を進め、これまでに債権管理、予実管理、勤怠管理など、約150本のプログラムを自社開発しています。システムの開発に関しては、マイクロソフト社の開発者向けツール「Visual Studio」の無償版やオープンソースのデータベース管理システム「PostgreSQL」を活用し、ゼロコストに近い形で開発・運用を実現しています。
システム開発が始まる前は、書類はすべて紙で処理され、帳簿の管理は手計算とエクセルが混在していたとのこと。DX推進グループのリーダーを務める竹内省三氏は、当時の状況について「見積もりから入金までの流れがうまくつながっていないせいで業務が煩雑になり、マンパワーで対応していた」と振り返ります。事務作業のデジタル化は「売上の管理と資金の流れを明確にするためにも必要」と考えた青木社長の意向を受け、2017年に債権管理システムを開発。これを契機に社内のデジタル化を進めていくこととなります。
その後、竹内氏と各部署から選抜した3名の社員でDX戦略を進めるグループを結成。選抜社員は全員プログラミング未経験者でしたが、竹内氏の指導のほか、厚労省の助成金を利用した社外講師による研修で技能を習得しました。事務の効率化を担うメンバーの末政さんと竹内さんは、「いかに便利にできるかを自分で考えて形にしていけるのでやりがいがある」と述べ、課題の発見から改善の要望への対応まで積極的に取り組んでいます。

手作業の業務を削減したことで業務改善が進み、サービスが向上
同社が製造する機械は完全受注生産で、1案件ごとに予算を設定し、実績から達成度合いを比較分析する予実管理を行っています。現場に出る社員は機械の試運転やメンテナンスなどで出張が多く、勤怠管理にパッケージシステムが適用できないことから、DX推進グループは次に予実管理システムと勤怠管理システムを開発。さらに、クラウド上での図面や設計書のバックアップ管理システム、来客や会議室の予約などを共有するスケジュール管理システム、各種報告からメンテナンスの技術情報を蓄積・継承するナレッジシステムを構築しました。2024年1月から義務化された電子帳簿保存法の対応についても、税務署と要求仕様のすり合わせを重ねて、システムを自社で開発しています。
システム導入後は、出張先からスマートフォンで日報を入力すればリアルタイムでデータベースに登録され、各業務システムに自動的に反映される仕組みが確立されました。これにより給与計算の作業が大幅に効率化し、手作業で処理していたときよりも約5日間の時間短縮が実現しています。予実管理が見える化されたことで、現場の社員は問題の把握と対策を行いやすくなりました。出張先でも社内サーバにアクセスし、現場で起きたトラブルの報告やメンテナンス情報を迅速に収集できるため生産ラインの早期再開が可能になり、顧客サービスの向上につながっています。

今後の展望
現在、DX推進グループでは機械設計図面の部品表をデータベース化し、図面の統合管理システムのテスト運用を行っています。今後は運用中のシステムの評価と改善にも力を入れていく方針です。当社は一品受注生産型のため技術承継が重要な課題であり、特にナレッジシステムの活用強化を図っていく必要があると考えています。現場からも新しい要望や課題が続々と出ているので、より使いやすく生産性向上に貢献するシステムを開発し、業務改善とサービスの向上を推進していきます。(取材者:工事管理課課長・DX推進グループリーダー 竹内省三氏)

取り組みにかかったコスト
コスト | 非公開 |
---|
相談先
相談先 | DX専門家派遣事業を活用 |
---|
会社概要

社名 | 株式会社ルネッサ |
---|---|
代表者 | 青木皇 |
所在地 | 坂井市三国町新保97-9-18 |
従業員数 | 36名 |
取扱品目 | 各種専用搬送装置システム等の設計・製作、据付および保守 |